町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

らん読日記 記事一覧らん読日記

田中秀臣『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)

2005.01.11(火)

【著者】田中 秀臣〈上武大学 ビジネス情報学部〉教授
 野口 旭〈専修大学 経済学部〉教授、若田部 昌澄〈日本銀行副総裁、早稲田大学 政治経済学術院 教授〉の3人のエコノミストはいずれも「リフレ派」の主要メンバーです。そのリフレ派を田中教授は次のように、本書で説明しています。

装幀:中島 英樹

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小谷野敦『評論家入門』清貧でもいいから物書きになりたい人に(平凡社新書)

2004.12.03(金)

 その本が面白ければ、自ずと読む速度が速くなるものです。つまり、面白さと読む速度は正比例にあるといえましょう。

装幀:菊地 信義

 もちろん例外はいくらでもあります。たとえば、マルクスの『資本論』は19世紀中期までのイギリス資本主義経済を分析対象とした社会科学上大層有用でかつ、実に面白い著作ではありますが、あれをスラスラと読むことは、到底ぼくには不可能です。
 あるいは多くの哲学の書物群も、然り。

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奥田英朗『空中ブランコ』(2004年上半期・第131回直木賞受賞;文藝春秋刊)

2004.11.16(火)

 まだ一ヶ月以上あるものの、今年も残り僅かとなりました。そこで、2004年を振り返って、今年最も面白く、楽しめたエンタテインメントを今回は採り上げました。

 それは今期の直木賞受賞作でもある、奥田英朗の『空中ブランコ』です。
 この作品集は、トンデモ精神科医、伊良部一郎を主人公とした表題作を含む5編からなる連作短篇集であり、いずれも初出は「オール讀物」でした。
 後に、フジテレビによってドラマ化されましたし、映画化もされたので、ごらんになった方も多々いらっしゃることでしょう。

 前作品集として『イン・ザ・プール』があり、同作も直木賞の候補に推された快作です。

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森鷗外『文づかひ』(鷗外全集;岩波書店)

2004.11.09(火)

1)初出に関して
 明治24年(1891年)1月28日(執筆当時28歳)、吉岡書籍店発売の定期刊行叢書「新著百種」(新刊書下ろし小説叢書)第12号に、「鴎外漁史」の雅号で発表された。鷗外、鷗外漁史以外にも、紺珠居士、観潮楼主人、千朶山房主人、帰休庵等の雅号を使用していた。
 ちなみに、島崎藤村の藤村、田山花袋の花袋も、同じく雅号であり、これは中国、日本の文人墨客の間では大正末年まで続いた伝統であった。

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丸谷才一『挨拶はたいへんだ』(朝日文庫)

2004.11.05(金)

 作家の井上ひさしは、風邪をひくと芸能誌を枕元にうずたかく積んでそれを片端から読みながら、風邪が退散するのを待つそうです。

 対して、ミステリ好きの丸谷才一は、「買つて来いスパイ小説風邪薬」(『七十句』立風書房)という句があるぐらいですから、やはり本を読みながら風邪を遣り過ごすのでしょう。

カバー装幀・装画:和田 誠

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内村鑑三著『代表的日本人』鈴木範久訳(岩波文庫)

2004.10.03(日)

訳者の鈴木範久教授が担当されていた「日本キリスト教史」を、立教大学文学部在学時履修いたしました。

 本書刊行の経緯をご存じない方は、なぜ、日本語を母語とする内村鑑三の著書なのに、翻訳なのだろうと、不思議に思われたことでしょう。

 本書は、脱稿しながらも出版されないでいたHow I Became a Christian『余は如何にして基督信徒となりし乎』に先立って、明治27年に徳富蘇峰が主宰する民友社からJapan and the Japaneseと題して刊行された著書の改版であり、明治41年に刊行された英文著作Representative men of Japanを翻訳したものです。

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阿川弘之『食味風々録』(新潮文庫;読売文学賞受賞)

2004.10.03(日)

 読書の楽しみは、良書と出会うことです。

カバー装画:森 英二郎

 ただ、良書と一口に言っても実にさまざまの種類があります。面白い読み物、タメになる読み物、感動する読み物、それぞれみな良書であることには変わりないのですが、その良書を構成する文章が手練れによる馥郁とした香りあふれる、艶のあるものであることに、ぼくはなににもまして大きな価値を見出すのです。

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樋口一葉『たけくらべ』

2004.10.03(日)

 『たけくらべ』を読むのは二十数年ぶりのことでしたが、もはや初読の時の感想は覚えていません。

 読み終えて、初読の時にも抱いたかもしれない違和感を覚えました。ただ、それが何に由来するものなのか判然とはしなかったのですが、佐藤正午の『たけくらべ』に関する小論を読み、氷解したので、それを記します。

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樋口一葉『にごりえ』

2004.10.03(日)

1、『にごりえ』におけるストーリーの意味
 さる(2003年)9月30日の朝日新聞夕刊に載ったインタヴュー記事で、吉本隆明が「今の小説はストーリーがないと面白くないというが、それはどうでもいいことで、文学は本質をできるだけ豊かに展開するものです」と発言していました。

 『にごりえ』にストーリーはもちろん存在しますが、しかしそれは、物語を展開させるためというよりも、T.トドロフがいうように、「表象された時間性をもった指向的テクスト」といったたたずまいを装っています。

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芥川龍之介『奉教人の死』

2004.10.03(日)

1、本作品が置かれる、芥川龍之介作品群における系譜上の位置
 芥川は、王朝や、中世や、江戸や、文明開化期を背景とする、実に多彩な系列の作品群を発表した。

 本作品は、25歳で大学を卒業した年に、早くも新進作家としての地位を確立することができた芥川が、『煙草と悪魔』と題する切支丹物の一作目を著した後、生涯にわたって書き続けることになる切支丹物のひとつとして著された。

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