町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

田中秀臣『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)らん読日記

2005.01.11(火)

【著者】田中 秀臣 教授〈上武大学 ビジネス情報学部〉
 野口 旭 教授〈専修大学 経済学部〉、若田部 昌澄〈日本銀行副総裁、早稲田大学 政治経済学術院 教授〉の3人のエコノミストはいずれも「リフレ派」の主要メンバーです。そのリフレ派を田中教授は以下のように、本書で説明しています。

装幀:中島 英樹

 “リフレ派というのは耳慣れない言葉かもしれないが、リフレーション(Reflation=景気を回復させるために行われる通貨膨張政策)に由来し、「経済の活性化のためにデフレを脱して、緩やかなインフレで経済を運行するべきだ」と考える人たちのことをいう。”

 ではこのリフレ派は、エコノミストの間で今日広い支持を得ているのかといえば、自らこの景気対策を“非伝統的”と称し、その“実施に対しては、専門家の間でも意見が分かれている”と記すように、専門家の間で賛意が形成されている一派では決してありません。

 それを証明するように、たとえば伊東光晴編『岩波現代経済学事典』(岩波書店)によれば、“インフレ抑制政策をデフレ期に求めるという無知に基づくもので、いずれも責任を日銀に押しつけようとする政治的発言である。不況期に通貨政策で物価上昇が実現できるというこの種の考えは、誤った通貨数量説でもある。”と断じています。

 あたかもこれを受けたかのように本書では、「エコノミストたちの影響力はエコノミストたちの意見の相違が最も大きい分野で最大になる」という経済学者に関するマーフィーの法則を、紹介しています。

 しかし、エコノミストに要請されている最大のものは、本書で紹介しているように、グリーンスパン(米連邦準備制度理事会委員長)が発言した、“専門家は政治的な利害や政策の実現性に配慮することなく、最善の政策を助言すべきだというアドバイス”にある、「最善の政策」の提示です。

 さてその「最善の政策」を、今の日本に当てはめた場合、さまざまな局面でそれは提示されなければなりませんが、そのひとつに、今日の日本を覆うデフレ経済への処方箋があります。

 その代表的な応酬として、野口悠紀夫(早大大学院ファイナンス研究科教授)と浜田宏一(イェール大教授)の論争があります。
 「構造改革論者」野口への反論として、浜田は“物価安定下でも大きな痛みを伴う諸改革をデフレの逆風の中で行う必要があるのであろうか。しかも不良債権を整理し、依存企業を整理した後、デフレ下で経済が活性化するのであろうか。そのために、これ以上失業者を増やし、倒産を加速化させるデフレの実験を国民に要求しようとするのであろうか」”と主張します。

 これを評して浜田に与する田中は、「構造問題シバキ上げ論」と命名していますが、なるほどたしかにその通りだという気にさせる、野口の意見(本書参照)です。

 もうひとつ是非とも触れたいのが、小泉首相が常々口にする、「プライマリーバランスの黒字化」です。
 本書では、「ドーマーの公債命題」を引き合いに出して、その無効性を証明しています。「ドーマーの公債命題」とは「公債利子率が名目経済成長率よりも低ければ財政は破綻しない」というものです。

 田中はこのように記す。
“今日の日本の危機は、主にデフレによってもたらされた租税国家の危機である。その処方箋もはっきりしている。それはドーマー命題から導かれるように、「総需要の不足を解消し、成長率を安定的なものにする有効需要政策」である。”と。

 そして田中は○○の一つ覚えのごとく、インフレ目標を設定しての超金融緩和政策を主張するのです。

 田中の切っ先は、道路公団や郵政の民営化問題、年金制度問題にも及ぶのですが、いずれも、リフレを伴った構造改革を推し進めれば、それは解決されるというのです。

 たしかに、このリフレ派を批判するエコノミストは、枚挙に遑がないほどたくさんいます。けれど、そんなにまでいうのであれば、ひとつリフレ派の改革をやらせてみてはいかがでしょうかと、ぼくは思うのです。

 なぜならば、竹中平蔵内閣府特命担当大臣を先頭に押し進めている小泉構造改革は、余りに国民への負担が大き過ぎると、ぼくは思うからです。
 それこそ、よく使われる比喩のように、「手術は成功したけれど、患者は死んでしまいました」ということになりかねませんから。