『季刊芙蓉』第82号・2009年冬
立ち喰ひそば屋で恩師と遭ふ迢空忌
外人がやがて加はる盆踊り
秋の蚊を打つて目覚める夜の列車
鰯雲電話の音の鳴り止まず
秋冷や三人寄れば自慢ばなし
新聞を読む梨の汁滴らせ(★)
大学の図書館出でて秋惜しむ
答案の書けぬ夢また冬近し
立ち喰ひそば屋で恩師と遭ふ迢空忌
外人がやがて加はる盆踊り
秋の蚊を打つて目覚める夜の列車
鰯雲電話の音の鳴り止まず
秋冷や三人寄れば自慢ばなし
新聞を読む梨の汁滴らせ(★)
大学の図書館出でて秋惜しむ
答案の書けぬ夢また冬近し
眼を逸らすのに力要る花見かな
服脱ぐや紛れた桜舞い落ちる
復活祭お互いの無事確かめぬ
初恋の人と藤棚で待ち合わす
かくまで軽き母の手握り薄暑(★)
牛丼屋で雨宿り卯の花腐し
梅雨の明おならで家族さんざめく
夜中に目覚め大福食す冬至
角袖に腕通す音淑気かな
修論を読初にして早や知命
丸暗記こぼさぬやうに大試験(★)
菫摘む妻の頭に白髪見ゆ
麗かやぬるき味噌汁飯にかけ
春嵐帽子おさへてペダル踏む
蒟蒻を食してみたし春の午後
そば屋にて「枯葉」聞きつつすするざる
秋空の気球に見とれ妻とわれ
車のミラーで髪整へて師走(★)
車中にてもみぢを肴に酒を飲み
いそいそと帰郷し虹に迎へらる
柚子湯にて鼻歌唄ふインド人
冬薔薇祈る形で顔寄せる
出がらしのコーヒーすすり試験勉強
棒と化す足もぎみたし土用入(★)
言葉持たぬ猫睦まじく秋に入る
飲まなければとても好い人鰻食む
下ろしたての靴履き出でて大夕立
歯にはさまるあたりめを抜く晩秋
歯を磨いても痛みは取れぬ白露かな
人はテストされ試され冬近し
ゆったりと動く小鳥を見たことなし
尻取りで「ず」を探し梅雨に入る
眼をつむり盲導犬に引かれ立夏
退院しいつまでも万緑に見入る
トマト入れた味噌汁をこはごは飲む(★)
阿修羅となつて物捨つ憲法記念日
母の自転車に空気を入れて芒種はや
妻と手繋ぎ献血に行く夏至
居並びて日向ぼこする猫と犬
物捨てる喜び見つく春の闇(★)
捨てられぬ背広着て行く春隣
眼を醒まし数かぞへをり冬の夜
草の芽を見つめ嗅ぎ掘り始む犬
寒明の道に落ちゐし帽子拾ふ
眠られぬ日々続きをり寒戻る
電車の席譲りて立ちて梅を観る(★)
席譲る人の瞳に映る茱萸
奇跡的に長き胴持て余す冬
瓦煎餅嫌ひなままに冬に入る(★)
怪我の治療で失神したり冬の昼
富士を見て不死想ふ冬至の日
ふと実存を思ひ做す初景色
上機嫌の師に戸惑ひつ大晦日
捲りしカレンダーに見惚れる年の夜
風鈴売ゆつくりと天秤棒下ろす(★)
肩越しに見るアシカショー夏の午後
妊婦にも隔てなく降る驟雨
少し前屈みで歩む炎天下
夏休みの課題は『破戒』読むことに
夏を退治し自らを誉めやうか
嫌ひな人を誉めそやしたり秋の風
ミス日本かほどに奇麗秋めきて
散髪の帰りに立ち寄る菖蒲田
喪服だろうがシャーベット頂きますよ(★)
短夜に迷惑メイル征伐す
眼鏡掛けたまま午睡に誘はる
袷てふ季語の不思議を語り居り
上野公園緑雨のレオナルド展
消防活動終へて麦茶を振舞はる
町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打