町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

俳句 記事一覧俳句

『季刊芙蓉』第72号・2007年夏

2007.07.01(日)

消しゴムで答案破れ受験生(★)
目が腐るほど番号見詰む受験生
少し多目にバター塗る三ヶ日
春ショール外す仕種の軽やかに
背の違う遺弟の靴履き苗木植う
しじみ売しみじみと釣銭数う
年重ね頑なになり花の冷
整理しかねたネクタイ締めて麗らけし

『季刊芙蓉』第71号・2007年春

2007.04.01(日)

深まらぬ議論の傍らちちろ鳴く
酒呑むと卑しくなりぬ十三夜
月光を頼みの消防団訓練(★)
鼻に惚れてもそれも恋冬の朝
書き留めぬままに成さぬ句数え日の
リスかじる胡桃味はふこともなく
美しき人風邪声も美しく
大根の肌さすりつつ通話中(★)

『季刊芙蓉』第70号・2006年冬

2006.12.01(金)

美人は口大きと知れりパリー祭(★)
夏木立ベンチの上の文庫本
帰省から戻りし絵日記白きまま
図書館は休館晩夏の受験生
昼寝人読みさしの本従えて
夏木立木漏れ日の滝かいくぐり
扇風機・エアコン嫌い水を呑む
余りにも小さき教会蕪のごと

『季刊芙蓉』第69号・2006年秋

2006.10.01(日)

菜の花にふと立ち留まる犬二匹
薫風を受けて墓地を全力で走る
線引きつつ教科者を読む新学期
音立てず蕎麦食う外国人梅雨入
梅雨に入り時計を変えて旅に立つ
寝酒呑んでも眠られぬ男梅雨
傘捨てて抱き合ふ二人梅雨最中(★)

『季刊芙蓉』第68号・2006年夏

2006.07.01(土)

人絶えし海見たくなり年の暮れ
父の遺品の義歯に見入っている師走
聖夜のみ定刻前に教会へ
初夢で亡き弟にくすぐられ(★)
亡父(ちち)の飲み残しの酒を飲む冬至
八雲旧居で春の雨垂れ聞いており
竜天に昇りバッジを確かむる
教科書の匂い嬉しや新学期

『季刊芙蓉』第67号・2006年春

2006.04.01(土)

捨てられず飾りもできず赤い羽根
屈めた背中で空背負う稲刈
剪りし爪をじっと見詰むる夜長し
楽しげに仕事に行くや秋気澄む
改めて学生証に見入る大晦日
主なき靴を揃えて冬に入る(★)
朝霧の中からぬっくり犬出づる
山茶花を目当てに家を探し当て

『季刊芙蓉』第66号・2005年冬

2005.12.01(木)

夏休み岩波文庫買い求む
噛むように教科書を読む夏期講座
空咳し黙祷す終戦記念日
夜景見るための電車や薄羽織
苛めたる虫思い出す夏の午後
親の仇討つごと西瓜齧りけり
原爆忌シートベルトを締め直す
新蕎麦に誘われ暖簾を潜る
自転車を立ち漕ぎし野分に向かう(★)

『季刊芙蓉』第65号・2005年秋

2005.10.01(土)

年取れば皆同じ顔になる春
花びらを掌で受け入学す(★)
視力検査待つ間桜見つむ
柏餅ごく丁寧に葉を剥がし
我だけで博物館占める梅雨入
夏みかん皮むき終えて食う気失せ
ささくれし歯ブラシ使う梅雨の入

『季刊芙蓉』第64号・2005年夏

2005.07.01(金)

初雪やいつもの街路染め上げて
元旦に思わず探す富士の山
二度鳴る目覚まし憎し冬暁
新しき手帳にも慣れ春隣(★)
陽は天頂飛魚に手を出しそうに
ない筈の章魚の骨噛む夢を見て
屈伸運動の消防署員に春疾風
聖夜に受くホスチアの味あらたし

(ホスチア([ラ]hostia)は、カトリックのミサで、聖別される前の小麦粉で作られた種なしパンのこと)

『季刊芙蓉』第63号・2005年春

2005.04.01(金)

音出して引く電子辞書そぞろ寒
秋の夜広辞苑のカバーを剥く
老いても手を繋ぎ鰯雲見遣る
強風にわずかに揺れる葱坊主
病院を脱け早慶戦を見る秋
肩書のない潔き名刺冴え(★)
図書館で本延滞し知る師走
道端に枯菊となり供えられ