町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

俳句 記事一覧俳句

『都市』第103号・2025年2月

2025.03.11(火)

【青桐集】
広辞苑引かぬ日はなしとろろ汁

秋暑し帽子被りて乗る筏
母を呼びともに見つむる小望月
火事跡にいつまでもある三面鏡

 宮崎 斗士(海原):上五中七の構文はピシッと決まった。この下五に
 何を置くかが重要。住んでいた家族を様々に映してきた三面鏡を動か
 し難しという思いに共鳴できた。
手を合わせ時の伸びけり墓参り

【都市集】
月明に宛名確かめ投函す≪都市の窓≫
濯ぎ物きれいにたたみ秋麗
神輿から即かず離れず追ふ子ども
小夜時雨床から出でて米を研ぐ
拍手をはつきり打ちて冬うらら

目貼して思ひのままに高笑ひ

『都市』第102号・2024年12月

2025.01.06(月)

【青桐集】
夏木立出できしときは別人に

 中西夕紀主宰:気持のよい夏の木立を歩いて
 来て、すっかりリフレッシュしたのだろうか。
 このように別人になれたら、本当にいいのだ
 が。
恋破れ青きトマトにかぶりつく
強烈に口開けて寝る熱帯夜
夫婦仲良過ぎてすする冷し麦
秒針の時刻む音三尺寝

【都市集】
傘を買ひカントも買ひて梅雨に入る

 平澤ひなこ:リズムよく、外出して読書もし
 てと準備怠り無い作者が面白い。
子が親の日傘を持ちて見る試合
いつまでも見送る人に大夕焼
月天心写真を撮りてまた見上ぐ
マジシャンがショーの仕込みの熱帯夜

『都市』第101号・2024年10月

2024.11.17(日)

【青桐集】
風薫る休講掲示肩越しに

腕時計重く感ずる梅雨の入
雲海の中より聞こえ巡礼歌
手招かれ友と見入るや水馬
道炎ゆる幾たびも遭ふ救急車

【都市集】
夏期講習いつもより水多く飲む
読む本の余りに多し夏休み
たしかめて何度も見遣る余り苗
鮎の頭食らひて笑みの女の子
蜜豆の赤豌豆から掬ふ子よ

『都市』第100号記念号・2024年8月

2024.08.14(水)

「都市集」巻頭百句
春の昼離れ見詰むる紙芝居
【青桐集】
競漕の光の中を突き進む

長き会議いまだ終はらず春の虹
師と呼べる人を数へて春の風
無くなりし腕時計出づ五月晴
足袋に趣向凝らして臨む大茶会

【都市集】
歌ひつつ帰る幼の復活祭
読みかけの頁めくるは若葉風
若葉風悪夢を払ひ吹き抜くる
印鑑を忘れ戻りて春時雨
のどかさや万葉集を読みふけり

『都市』第99号・2024年6月

2024.06.15(土)

【青桐集】
ほめらるる夢から覚めて春の昼

本読みて乗り過ごしけり初電車
犬抱きて焚火の輪から去りかねる
春浅し手品の稽古いつまでも
残る雪歌の続きを思ひ出す

【都市集】
初相場途中で拾ふ五圓玉
いつもより大きく背伸び年始酒
木の芽雨おかげさまにてひと眠り
春燈に爪切る人の影の濃く
欄干に落とし物かけ春の昼

春の燭逢瀬の靴を磨きけり

『都市』第98号・2024年4月

2024.04.17(水)

【青桐集】
梯子乗り一点見つめ昇りをり

障子に映る我が身を攻める仔犬かな
パラフィン紙粉粉となる憂国忌
図書館の行きも帰りも枇杷の花
昨年の続きを開けて読始
 黒岩 徳将(いつき組・街):スマートフォンのアプリ
 を使えば、前回読んだ箇所を的確に示してくれるのだ
 が、この句は紙の本と解釈した方が本の手触りを感じ
 るし、栞があるかもしれないなどと想像の余地が膨ら
 むだろう。新年の清々しい気分を寿ぐように詠むので
 はなく、年が変わっても淡々と本を読み進めていく主
 人公の平静ぶりを楽しみたい。考えられる日時は様々
 だが、いっそのこと元日の深夜につい先ほど中断して
 いた読書を再開するという句ならなお面白いと思う。

【都市集】
友引に寄席開く寺夜鷹蕎麦
眼を休め遠くを見るや帰り花
熱燗や御礼の声は高らかに
首にざぼん提げて来たれる松葉杖
帽子脱ぐ間もあらばこそおでん酒

『都市』第97号・2024年2月

2024.02.18(日)

表紙イラスト:KICHIKA

【青桐集】
結局は同じセーター選ぶ父

 中西夕紀主宰: 父へのプレゼントのようだ。一緒にデパー
 トへ行って欲しいものを物色していた父が選んだのは、す
 でに持っているセーターと同じものだった。何事にも意欲
 のなくなってしまった、老いた父を愛おしく思ったことだ
 ろう。
無患子を見つつかすかな風を知る
キャッチボールやめて見上ぐる雁の列
気ぶつせいな茶会を終へて秋の雨
澄める秋心字池にて落ち合へり

【都市集】
冬ぬくし久方ぶりの今治水
いつの間にむきになりけり掃納
酉の市一円玉を拾ひ上げ
泣く子ども天の川見て笑みこぼす
渋き茶を飲みつ聞こゆる法師蝉

『都市』第96号・2023年12月

2023.12.29(金)

【青桐集】
山開きいつもの顔を探しけり

夕顔を見つめし後に書く手紙
夜店にて首から提げし財布出す
検眼の最中聞こゆる秋の蝉
秋めくや列の途切れぬ洋食屋

【都市集】
胡瓜もみ迷ひながらも酢を飲みて
岩魚釣大漁にても隠す笑み
黒眼鏡はづしたたんで墓参
松葉杖ついたまま見る木槿かな
結び瘤ほどきあぐねて夏の果

『都市』第95号・2023年10月

2023.12.21(木)

表紙イラスト:KICHIKA

【青桐集】
眠る妻の足裏くすぐりさくらんぼ

先輩が勘定をもつ熱帯夜
 大矢知順子:仕事帰りの「ビール一杯!」この程
 度なら「ごちそうさま!」で済むのかも知れない。
 らん丈さんのさばさば感が愉しい。季語が効いて
 います。
履歴書を書きては破り麦の秋
夏めくや靴下脱ぎて田に入る
草いきれベルト締めつつ漢出で

【都市集】
神父様寿司屋であひて夏の雨
短夜や隣家のラジオ点きしまま
傾国といはれるひとの平泳ぎ
青梅の落つる音して犬ほえぬ
幾分かぞんざいにあり胡瓜揉

『都市』第94号・2023年8月

2023.08.23(水)

【青桐集】
客人の帽子出てくる春炬燵

 中西夕紀主宰: この客人は気の置けない間柄のようだ。
 炬燵に招かれて、脱いだ帽子を脇へ置いたつもりが炬燵
 の中に入ってしまった。長尻をして「ではっ」と、帰る
 ときに帽子を忘れたのだ。面白い句である。
 今瀬一博(「対岸」「沖」同人):何となく思い切れず仕舞
 えないでいた「春炬燵」の、興ざめな存在感。「客人」の
 忘れ物は、冬帽か。益々拍子抜けの作者の表情が見えるよ
 うな作品。
春めきて地卵いよよ重み増し
菜の花や吹けないくせに口笛を
クラス替へ決まり見詰むる雪柳
相撲取自転車こいで風薫る

【都市集】
凍解や自転車のベル高らかに
永き日の美術館にて友と遇ふ
太公望釣竿上げて桜守
献血の帰りに開く春日傘
斜交ひの麦藁帽子直されて