町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

落語歳時記15 「西は美人?」らん丈の、落語歳時記

2001.06.01(金)

 われらの職業は小説家や裁縫師のようないじょく居職とは違って、落語CD等で印税が入るごく一部の落語家を除いては、家にいる限り一切収入がない典型的な出職です。しかも、出社すべき事務所を持たない者が大多数ですので、通う仕事場は日によってまちまちです。したがって、日本全国を股に掛けるといえば体裁はいいのですが、実際はメガロポリスの首都圏をあっちへ行ったりこっちへ来たりしつつ、合間を縫って地方回りもして、生きる糧を得ているのです。しかも、車はおろか運転免許も持たないぼくは移動の手段をもっぱら電車に頼っています。ですから、東京近郊の鉄道には大方乗っています。たとえば、東葉高速鉄道や北総公団線、あるいは東武亀戸線等の地域密着型の路線は、沿線にでも住んでいないかぎり、なかなか乗るチャンスはないでしょうが、声がかかれば地獄以外のどこにでも参上する落語家は、いずれも既に制覇しております。そんなに威張るほどのもんじゃありませんけど。

 乗った電車のなかで何をしているか。たまに稽古をする以外は、新聞や文庫本を読んだりして目的地へ着くのを待つのですが、欠かせぬ楽しみが、女性ウォッチングです。これが沿線によって、結構バラエティに富んでいるんです。おおまかな傾向として首都圏の場合、渋谷新宿駅をターミナルとする私鉄に、美人が多いような気がしないでもないような気がするような気がする。という、なんとも持って回った言い方になってしまいましたが、いまやセクハラだの人権だのがうるさく、お察しください。これを初めて実感してのが、生まれ育った町田を離れ、最初に引っ越した北千住を通る東武線に乗ったときのことでした。ご存知のとおり町田には小田急と横浜線が通っていますが、ぼくはもっぱら小田急を利用していました。その新宿始発の小田急と浅草始発の東武では、こと女性客の容姿に限れば、月とスッポンの違いがあったのです。

どちらが月かは言いますまい。どうしてこうも違うのかと思い、ちょっと考えてみました。

 これは有名な説ですから、ご存知の方も多いかと思いますが、人間は都市の西側に住むのが自然なのだそうです。つまり、朝起きて出勤は太陽を目指して東へ向かう。そして夕暮れ時、仕事を終えて再び沈みいる太陽に誘われるように、今度は西へと向かって家路に着くといった具合に。元来が向日性の動物人間は、常に太陽を目指して行動をするのが自然だというのです。ですから東京の場合、都心の西に向かって住宅地が拡がるのは当然のことで、それは東京に限らず、大阪における神戸、ロンドンにおけるウェストエンドのごとく、洋の東西は問わないというものです。これは、ぼくのように隅田川を越えた下町に住んでいる者にはあまりありがたくない考え方です。ただ、太田道灌が江戸城をあの地に構え、主な武家屋敷をその西に配したことは、どうも単なる偶然とは思えないのです。

 このように、自然の理に適った都市の西郊に住んでいる女性に美人が多く、東に住んでいる女性に比較的確率的に美人が少ないかもしれないような気がしないでもないという現象は、この理論だけでうまく説明がつくとは到底思えません。むしろ、読者の皆さんに教えていただきたいのです。どうしてなのでしょうか。それとも、単なる思い過ごしで、前提からしてぼくが間違っていたのでしょうか。

 実は6月28日(木)、三遊亭らん丈が初めて独演会を開くのですが、その会では従来の落語会とは趣を変えて、上記のような埒もないことを会場の皆さんとともに考えようというものです。是非お越しください。会場:池袋演芸場。問合せ:落語協会TEL3833-8563