町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

会派『まちだ新世紀』 行政視察2008年7月10日「富山市・高齢者運転免許自主返納支援事業について」議員活動

2008.07.15(火)

1、はじめに
 平成17年4月1日に、7市町村の合併により新たな、現在の「富山市」が誕生した。その結果、人口は、町田市とほとんど同規模である、約42万人となった。
 ただしその面積は、県庁所在市では静岡市に次いで全国で第2番目の規模にあたる、約1,240平方キロメートルという途方もない規模であるため、町田市と較べた場合、格段に広い市域となっている。

2、高齢者と交通環境
 交通事故死亡者における高齢者(65歳以上)構成率を見ると、平成19年では、全国平均は42.3%であるのに比して、富山県全県では52.4%、富山市では57.0%と、富山は県単位でも市単位でも、全国平均より際立って高い比率を示している。

 また、高齢者は被害者となるばかりでなく、加害者となるケースが増加しているのも特徴である。高齢者が運転手であった場合の事故件数は、平成8年では621件であったが、平成19年では1,101件に、ほぼ倍増している。
 あわせて、運転中に死傷した者(富山県)のうち高齢者の構成率も増加している。平成13年には、8.4%だったものが、平成19年には12.5%に上昇した。

 にもかかわらず、高齢者の免許保有率は平成19年現在、44.1%にも上っている。このままの情勢で推移すると、平成22年には、約50%の保有率に上昇するというデータもある。

3、支援制度の内容と現状
 当支援事業の名称は、『高齢者運転免許自主返納支援事業』といい、平成18年4月1日から始められたものである。

 同制度の趣旨は、「運転に不安を持つ高齢者が、自主的に運転免許を返納された場合に、車に代わる移動手段となるバスや電車など、公共交通機関の利用に係る費用等を支援することにより、免許を返納しやすい環境づくりをするとともに、高齢者が加害者となる悲惨な事故の減少を図る。」としている。

 対象者は、65歳以上で、有効期間内の運転免許(複数所持の場合)を全て返納した人で、支援は同一人に1回限りとしている。

 当事業の基本的な考え方は、以下の5点にわたる。
1)身体能力が低下した高齢運転手が加害者となる事故の防止

2)運転免許を自主返納する人の存在

3)免許返納後の外出確保(ひきこもり防止)

4)運転免許証に代わる身分証明書を必要とする人への対応

5)高齢運転者や家族、さらに市民全般に交通安全の大切さを啓発

4、支援の内容
 支援は以下の2種に大別される。
(1)公共交通乗車券(2万円相当)の支援
1)富山地方鉄道の共通乗車券
 この共通乗車券は、地鉄路線バス・地鉄電車・市内電車・市内各コミュニティバスに使用することができる。なお、希望者にはおでかけ定期券の購入費も支援する

2)JRオレンジカード

3)富山ライトレールICカード
 資料によると、上記のうち、1)を選択する場合が最も多い。

(2)身分証明書等の取得費支援
1)住民基本台帳カードの取得費(500円)

2)運転経歴証明書の取得費(1000円)

 なお、上記(1)と(2)は、同一人での希望があった場合、併給が可能である。

5、運転免許返納状況
 平成18年度に事業を開始するや、平成17年度の返納高齢者が42人だったものが、570人へと13倍超に飛躍的な伸張を示した。平成19年度は、前年度に較べると減少したものの、それでも471人が返納した。
 地域別の内訳をみると、市街化地域である富山地域(旧富山市)での申請者が、高い比率を示している。

 これは、広い市域のうち、富山地域が公共交通網において比較的整備された状況にあることと、それ以外の市域では、農作業や買い物の利便性など日常生活における車への依存度が高い地域性という、二つの大きな原因が考えられる。

6、支援制度実施後の状況
 高齢運転者が第一当事者の事故状況における経年変化をみると、平成17年度が297件あったのに比べ、制度実施後の平成18年度は332件、平成19年度は415件と漸増傾向にあり、制度実施の効果が顕現していない憾みがある。

 また、高齢運転手と事故件数を見た場合、千人当たり事故件数が、平成17年度から平成18年度、19年度と漸増傾向にあり、ここでも支援制度を発足させた効果が確認できない。

 これは、運転免許を返納したことによって、高齢運転手の事故が減少したことを意味したものではないが、換言すれば、運転免許を返納する意思のある高齢者はもともと交通安全に関しては意識が強く、返納による効果が視認できないことを意味しているのではないのかと筆者は考えた。

 ただ、高齢運転手による死亡事故は、平成17年度は7件あったものの、平成18年度は2件に激減し、平成19年度も4件と減少傾向にあることは指摘できる。

7、今後の展開
 市の広報誌やケーブルテレビによる広報活動の充実と新聞記事、テレビニュースなどマスコミによる報道の強化を行うことにより、高齢者の運転と事故について考える「きっかけ」と交通事故防止を考える高齢者本人や家族の関心の高まりを通して、広範な交通安全意識が醸成されることによる、高齢者の安全運転意識や交通安全意識の向上を見込む。