町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

慶應義塾大学大学院 法学研究科 政治学専攻「憲法特殊講義」Ⅱ大学での活動

2014.01.13(月)

【箇所】慶應義塾大学大学院 法学研究科 政治学専攻
【開講学期】2013年度 秋学期[2単位]
【科目】憲法特殊講義Ⅱ統治機構の現実の理解に向けて
【担当】森永 耕造 講師〈人事院 給与局次長〉
【課題】これまでの講義を受けて、日本の官僚制について自身の思うところを述べなさい。
【副題】(筆者による)公務員の労使関係と基本権問題に関して
【分量】A4 1-2枚

 官僚制とは、20世紀に入って、ロベルト・ミヘルスとマックス・ウェーバーなどの新しい官僚制論があらわれるにいたって、高度に多義的な概念に変貌したが、本稿では、当講義で扱われたように政府の行政組織を指す。ただし、その政府のうち、地方政府を主な対象とする。

1、公務員の性情(性向)
 筆者は、(町田市議会)議員であるが、その任を得たことで、それ以前の一市民であった頃と比して、格段に多くの(地方)公務員と接することとなった。

 公務員と接する過程で、様々なことを考えさせられたが、その一つに、公務員に特有な性情があることに気づいたことが挙げられる。それは、アニマル・スピリッツ(血気や野心から時として予測不能で不合理な行動をする心理)をもつ方がさほど多くはみられない、逆にいえば、「石橋を叩いて渡る」性向をもつ公務員が多いように見受けられたことである。

 それは、そのような性向をもつ方が公務員を志望し、その職を得ることによって見る者にその印象を与える、いわば先天的なものに由来するのか、それとも、公務員を志望する時点ではそのような性向はないが、公務員として過ごすうちにその性状をもつことになる後天的なものによるのかはわからないものの、そのように感じられたのである。

 もっとも、わが国のような勤務条件法定主義をとる国で、アニマル・スピリッツをもった公務員ばかりがいても、それはそぐわないことではある。

 それゆえか、少数のアニマル・スピリッツをもった公務員は、任期途中でその職を辞する傾向があることが認められる。その例として、中央省庁のキャリア官僚が、国政や知事に転ずることが挙げられる。

2、従業員満足
 マーケティングでは、従業員満足(Employee Satisfaction)といって、ESと略される用語がある。この数値が低いと、離職率が高まり、仕事に対する意欲が薄れ、生産性が低くなりやすい。逆に、ESが高いと離職率は下がり、コミュニケーションコストが低下し、生産性の向上にもつながるため、雇用者にとっては好ましいこととなる。とりわけ、サービス業者では従業員の態度や意欲がサービス提供を通じて顧客に伝わりやすく、結果として顧客満足と従業員満足は高い相関性があるため、サービス企業は顧客満足を高めるためにも従業員満足を高めための工夫をおこなっている。

3、公務員の定数減員
 1998年当時大蔵官僚(当時)の接待で、ノーパンしゃぶしゃぶ店を使ったことが明るみになった頃から、マスコミによる官僚叩きが顕著になったように思われる。それは、今でも続いており、それに政治家も同調している。特に、「脱官僚」を党是とする、みんなの党、結いの党にその傾向が強くみられる。

 また、公務員の定員は長期間にわたって減員され、国の行政機関であれば、平成21年度は309,954人であったものが、平成25年度には297,412人に減少している。それを国際的に見た場合、わが国の公務員数は、他の先進諸国とくらべて格段に低いものとなっている。

 ただ、このようなダウンサイジングは、公務員に限ったことではなく、民間会社もグローバリゼーション化に対応するため、正規雇用者を大幅に減らしている。

4、法的に見た公務員と民間会社員の身分保障
 整理解雇の法理は、1971年のドルショックや1973年の第1次オイルショックに起因する構造的不況・雇用調整のなかで、裁判による判例によって形成されたものである。これは、「整理解雇の4要件」といわれるものであるが、それにくわえて公務員の場合、国家公務員法75条等、地方公務員法27条等によって、その身分は保障されている。

 また、公務員の労働基本権が制限されていることの代償措置として、措置要求制度がある。また政治的に中立かつ独立した行政委員会として国に人事院、地方公共団体には人事委員会又は公平委員会が置かれ、それぞれ人事行政の専門機関としての役割を果たしている。このように、公務員は、憲法28条による労働権が十全に保障されてはいないものの、代償措置が講じられている。

5、公務員と民間との交流
 わが国の労働市場を考えた場合、以前ほど顕著ではなくなったが、いまだに、その採用形態は、新卒者の一括採用が一般的である。公務員にも、非正規雇用による期間限定の職員が増えたものの、その主力は、いまでも正職員である。

 こうしてみると、公務員は、1、でふれたように、アニマル・スピリッツに富んでいない者が多く見られ、法的には身分が保障されている存在である。

 学校を卒業後公務に就くと、官民交流があるとはいえ、大多数の公務員は、民間の就業実態を知ることなく勤務している。そのことによって、公務員はその特有な目でしかものを見られなくなっているのではないだろうか。

 たとえば、北海道のニセコ町では、長い間、正午から午後1時まで町役場の窓口を閉めていた。それは、職員が昼食をとるために自宅に戻るからである。そこで、町長は、その間の窓口を開けようとしたところ、職員が反対したそうである。理由は、そんなことをしたら、町民が多数来庁し、せっかく窓口を開けても、十分な対応ができなくなるというものである。しかし、このような発想は、民間では考えられない。民間では、窓口の利用者が多いのならば、それは、開けるのである。

 あるいは、武雄市図書館を民営化したところ、利用者が飛躍的に増えたのは記憶に新しいところであり、民営化によってそれ以前の公的機関によるものにくらべて、格段にサービス内容がよくなることは実証済みである。

 また、地方自治法の改正により、指定管理者制度が創設され、地方公共団体では、すくなくない施設が民営化されるようになったが、この気運をより確実なものとするため、公務員と民間との交流をより活発化させ、公務員に民間の視角を導入することが、国民により信頼される役所にするためには、欠かせないものと考える。

 その際、ESの面からも、公務員の身分保障は、従前どおりに据え置いたほうが、有効に作用するものと考える。