町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

2012年 文教社会常任委員会 行政視察報告書議員活動

2012.04.29(日)

 2012年4月18日から20日にかけて行われた、町田市議会文教社会常任委員会の行政視察報告書を掲出します。

【視察先】奈良県奈良市、京都府京都市、滋賀県湖南市、大阪府高槻市の4市でした。

【調査事項】1,義務教育の整備、充実とその質的向上について、2,義務教育の整備、充実とその質的向上について、3,障がい児教育について、4,社会教育の振興について、でした。

視察所感

【奈良市】〔調査事項〕小中一貫教育について
1、奈良市は、平成16年に「世界遺産に学び、ともに歩むまち−なら」小中一貫教育特区の認定を受けたことから、平成17年から田原小・中学校において小中一貫教育が実施され、現在はパイロット校を中心に小中一貫教育の実践、研究に取り組んでいる。
 3つの新設教科(郷土「なら」科、情報科、英会話科)を設けるなど独自の教育を展開している。
 また、平成20年度から小学5年生から中学3年生を対象とした「世界遺産学習」に取り組んでいる。「世界遺産から持続発展教育への展開」を目標に掲げ、世界遺産についての学習を通して環境、平和、国際理解などの発展的な学習へつなげていくことを目指している。

2、奈良市小中一貫教育の目標は、9年間の連続した学びの中で、確かな学力と豊かな人間性の育成を図ることである。

3、小中一貫教育パイロット校
 小中一貫教育は、施設一体型と連携型の2種の形態がある。連携型とは、対象とする小中学校が離れているものである。

4、小中一貫教育を導入した要因として、中学1年生における中1ギャップの解消が挙げられる。これは、中学1年生時に、不登校生徒、いじめが格段に増加する傾向があることによる。
 その解消を図るため、学制を従来からある6・3制ではなく、4・3・2制による小中一貫教育をとることにした。

5、持続発展教育(ESD:Education for Sustainable Development)に関しても、奈良市は、積極的に取り組んでいる。

6、奈良市は、学校選択制はとっていない。

7、小中一貫教育では、子どもたちの成長の段階・連続性という視点を、小学校と中学校の教員が共通してもつ、教員の意識改革に重点を置いている。

【京都市】〔調査事項〕コミュニティ・スクール(学校運営協議会)について、小中一貫教育について
1、京都市は、学校運営協議会の設置数が、平成23年8月1日現在で175校(園)であり、実績において全国有数の規模を誇る先進市である。
 ボランティアの参画を得て、学校運営について「協議」するだけでなく、共に「行動」することを特色とする京都市の学校運営協議会は「京都方式」とよばれ全国から注目されている。

2、小中一貫教育について
 2004年度に小中一貫教育特区の認定を受けている。現地視察を行った京都御池中学校は、御所南小学校、高倉小学校とともに「学校運営協議会」のシステムを生かした小中一貫コミュニティ・スクールに取り組んでいる。
 同校の校舎内に御所南小と高倉小の6年生の教室が設置されている。また、複合施設として保育所やディサービスセンター、飲食店等が併設されている。

3、京都は、明治維新にいたり、東京に遷都されたことにより、京都ブランドの地盤沈下を免れるため、ひとづくりを推進する気風がある。そこで「町づくりはひとづくりから」との理念が浸透し、町衆が「番組」とよばれる自治組織を結成した。そこでは、竈のある家が竈の数に応じて、お金を出し合い、町内が協力し合った結果、誰もが無償で通える学校をつくって、学校づくりを始めた伝統がある。

4、京都市は、徹底した開かれた学校づくりを目指しており、学校支援ボランティアは延べ約3万人に達する。
 学校評議員制度は、全校で導入している。(平成13年度)
 学校評価システムも全校で実施している。(平成15年度)

5-1、京都市が考える小中一貫教育の考え方
 京都市では、小中一貫教育を、小学校から中学校への学校生活の変化になじめないことが子どもたちの学習や学校生活に否定的な影響を与えるいわゆる「中1ギャップ」への対応、社会の目まぐるしい変化、子どもたちの心身発達の早期化などに対応し、児童・生徒個々の能力を十分に引き出す効果的なしくみと考えている。

5-2、小学校と中学校の学びと育ちを義務教育9年間の枠でとらえ直し、子どもたちの精神的、身体的な発達段階に沿った独自の教育課程の編成を行うなど、計画的、系統的な一貫教育を地域と一体となって行い、子どもたちの個性・能力を引き出していく。

5-3、京都市立の全ての小・中学校で、小中一貫教育に取り組むという視角をもつことから、全教職員が小中9年間の学びと育ちに責任を持ち、地域全体が小中9年間の学びと育ちに責任を持つことを志向している。

6、京都市の小中一貫教育の流れ
・平成16年3月に、「小中一貫教育特区」が認定される。

7、京都市の小中一貫教育の実施形態
・施設一体型:小中学校が同一施設、同一敷地内にあることを活用したもの。

・施設併用型:小中学校の施設などが独立しながらも、児童・生徒が柔軟に相互の校舎を活用したもの。

・連携型:小中学校の施設などが独立しながらも、教員と地域の緊密な連携による小中一貫教育。

8、京都市小中一貫教育 5つの視点
1)小中一貫共通目標

2)教育課程/カリキュラムの工夫・改善

3)教育活動の連続性

4)教職員間の連携・協働

5)家庭・地域との連携・協力

9、京都市の学校運営協議会の特色
・学校関係者評価委員会【辛口の友人】

・教員公募制度【教職員の採用に関する意見】

・校長の権限と責任【校長のリーダーシップによる学校運営】

10、京都市の学校運営協議会の成果と課題
〔成果〕
・人材確保も含めた学校教育活動支援が図られた
・学校・家庭・地域の連携が深まった
・保護者、地域の方々の学校への理解が深まった
・学校評価の充実が図られた
・地域・保護者の意識の変容や地域いまとまりができた
・子どもに変容が見られた

〔課題〕
1、委員やボランティアの人材確保
2、日程や意見を調整することが困難
3、数多く実施している学校支援活動の見直し
4、学校運営協議会の活動への教職員の関わり方や事務負担の軽減
5、委員やボランティアの年齢構成やその次世代への引継ぎの困難さ
6、教育課程編成との兼ね合いの難しさ

11、京都市では、学校選択制はとっていない。

【湖南市】〔調査事項〕発達支援システムについて
1、支援の必要な人に対し、個別指導計画による乳幼児期から学齢期、就労期までの縦の連携と、教育・福祉・保健・就労・医療の各部署による横の連携によって一貫した支援サービスを提供するシステム。
 2002年(平成14年)に湖南市が開始した独自の仕組みで、平成16年度バリアフライー化推進功労者内閣総理大臣表彰を受賞するなど全国から高い評価を受けており、各市からの視察も多数来訪している。

2、支援体制の司令塔である発達支援室(発達支援センター)を健康福祉部内に、また、発達支援センターの専門的支援の場を石部保健センター・三雲小学校・水戸小学校・菩提寺小学校内に設置している。

3-1、上記発達支援室は、個別の指導計画に基づく機関内のコーディネイトを担い、個のニーズに応じ長期にわたって一貫した支援を統括する部署となっている。

3-2、発達支援室は、発達相談・療育教室・ことばの教室(幼児部・学齢部)を統括する組織であり、乳幼児健診や園での気づきから何らかの支援が必要かどうかなどの発達相談事業及び療育事業を行っている。

4、発達支援システムは、甲賀地域障害児・者サービス調整会議の機能でもある個別調整会議とも連動し、就労や家庭生活を支援している。

5、支援システム構築のねらい
1)「今」の時点での、安心と支援の充実
2)「将来」を見据えた支援

6、発達支援システムの運営に関して
 平成11年13,000人に及ぶ署名が、当時の甲西町長に届けられたことに始まる。翌年には、発達支援センターの開所準備が始まり、湖南市個別指導計画に関する要綱(教育委員会告示)が出された。
 平成14年には、発達支援システムが開始され、発達支援室と発達支援センターが開所され、発達支援ITネットワークも開設された。
7、発達支援システムの活用について
1)発達支援システムの活用状況
・乳幼児健診とその後のフォロー
・療育による早期発達支援
・保育所、幼稚園における発達支援
・小学校への引き継ぎと小学校における特別支援教育
・中学校への引き継ぎと中学校における特別支援教育

2)高等学校等への引き継ぎと高校等支援

3)大学進学と就労支援

8、発達支援システムの効果と課題
・早期対応・早期支援の充実
・二次障がいの防止
・保健や福祉サービス、相談支援事業所、専門機関へのつなぎを個々のケースに応じてコーディネイトすること
・「就労・社会自立をゴールに考えて取り組みを振り返る」ことの視点の構築
・システムの健全な継続
・地域課題を解決し、個々のケースへ手立てを提示できる継続的な取り組み

【高槻市】〔調査事項〕「まちごと『子ども図書館』」構想について
1、子どもたちが「あらゆる機会」、「あらゆる場所」と通じて読書活動ができるように、市内の各学校図書館、公民館、子育て支援施設などと連携して市内全域を「まちごと『子ども図書館』」として機能させるシステムである。
 具体的には、中央図書館内に子ども読書支援センターを設置して各施設との連携を進めている。
 現地視察を行った高槻市立中央図書館ミューズ子ども分室は、関西大学高槻ミューズキャンパス内にあり、市と大学との連携事業として高槻市が大学施設を無償貸与されている、市民向けの児童図書館である。

2、「まちごと『子ども図書館』」構想実現に至る経緯。
平成18年1月に「高槻市子ども読書活動推進計画」が、策定された。
 平成20年2月に、高槻市図書館協議会から「これからの高槻市立図書館の在り方について」の答申が出る。同答申において、「『子ども図書館』の在り方について」という項目が立てられる。
 同年9月、上記答申を受けて、「高槻市立図書館整備方針」が策定され、『子ども図書館』について継続して検討することとなる。
 平成21年9月、「まちごと『子ども図書館』」構想が策定される。
 平成22年7月『子ども図書館』サービス実施の拠点として、関西大学高槻ミューズキャンパス内に高槻市立中央図書館ミューズ子ども分室が開設される。なお、本事業は、関西大学と高槻市が同大学の移転に伴う話し合いを重ねる途上で出てきた事業である。

3、「まちごと『子ども図書館』」事業の概要、特色について
1)高槻市は、「子ども図書館」を施設としてではなく、子どもたちが「あらゆる機会」、「あらゆる場所」で、読書を楽しむことができる環境を整備するシステムとしてとらえている。

2)図書館を中心に学校・幼稚園、公民館、子育て総合支援センター等の公共施設や家庭・地域文庫などと連携し、市内全域を「まちごと『子ども図書館』」として機能させるシステムである。

3)具体的には、各施設への図書の長期貸出を行い、1施設200〜500冊を1年ごとに巡回させることで、子どもたちが常に目新しい図書に出会えるようにしている。

4、「まちごと『子ども図書館』」事業の趣旨
 この事業は、「安心こども基金特別対策事業費補助金」(全額府補助金)が支給されるものである。
 この「安心こども基金」を活用し、今回は幼稚園、小・中学校、公民館を対象として、絵本・児童書を購入する。それを各施設に貸し出し、定期的に巡回させることによって、地域の子どもたちが「あらゆる機会」、「あらゆる場所」で読書活動が行えるように環境の整備を行う。