町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

早稲田大学大学院 社会科学研究科「福祉社会・政策開発」(自治体・NPO)大学での活動

2008.08.06(水)

【箇所】早稲田大学大学院 社会科学研究科 地球社会論・政策科学論専攻共通科目
【科目】福祉社会・政策開発(自治体・NPO)
【開講学期】2010年度 春学期[2単位]
【担当】坪郷 實 教授〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉
    天野 巡一 教授〈青森公立大学 経営経済学部〉
    鏡 諭 教授〈淑徳大学 コミュニティ政策学部〉
    並河 信乃 客員教授〈拓殖大学 地方政治行政研究所〉
【課題リポート】テーマ「市民立法−議会と市民立法」;『議会基本条例について』なお、本リポートの原本には注を付したが、本ウェブサイトへの掲示の際に、それを除いた。

当リポートにおける構成
第1章 自治体議会
第2章 議会改革
第3章 栗山町議会
第4章 議会基本条例の構成と特色
第5章 議会基本条例の展開

第1章 自治体議会
 筆者は町田市議会の議員をつとめる者であるが、町田市もその一つである普通地方公共団体に議会を置くことは、日本国憲法(以下、「憲法」と呼ぶ。)において、下記の通りに規定されていることをその最上位の法的理由とする。
93条 1 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

 上記にある、「法律の定めるところにより」地方自治法に、下記の条文がある。
89条 普通地方公共団体に議会を置く。
 上記にある二つの法によって、各普通地方公共団体に議会が置かれているのであるが、引用部分にある「地方」という概念が、中央に対して発せられたものであることから、中央政府が地方にとっては、決して軽んずることの出来ない存在であることがわかる。

 そもそも、「地方公共団体」とは、兼子仁教授が指摘するまでもなく、「いかにも堅苦しく使い勝手が悪い言葉」 であり、「それだけでなく、実は公法学的にも、地方自治が憲法で保障される以前の戦前的ニュアンスを残しているのである」 ことが指摘できよう。

 つまり「地方公共団体」とは、美濃部達吉 によれば、「国に統治される「団体」の一種であるというニュアンスが残っている」 のである。

 それに対して、1970年代以降の行政学では、「“統治主体”(一般的な政治・行政の主体)として、“自治体”と呼び慣わすのが、憲法・行政法学の立場ではふさわしいように考えられる」 ことから、本稿においても、本章のタイトルを自治体議会としたところである。

 その自治体議会は、2000年4月に地方分権一括法(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律)が施行されたことにより、「機関委任事務、条例準則、通達の制度が廃止され、中央集権型行政システムは地方分権型行政システムに転換され、地方自治の充実に歩みはじめたといえる」 自治体に、真の地方自治実現のために資する議会へと変貌を遂げはじめたのである。

 機関委任事務には、自治体議会は実質的にその権限を及ぼすことはできない。「しかも、その機関委任事務は、都道府県の事務の85%、市町村の事務の45%をも占めていた。 言い換えれば、自治体の行う行政事務に対して、都道府県議会の権限はその15%、市町村議会の権限はその55%しか及ばなかった。このように自治体議会は、本来すべての事務に対して権限を持つという地方政治において主役ではなく、まさに脇役であった」 と、指摘されるという側面が自治体議会にはあったのである。

 しかし、上記にあるように、この機関委任事務が廃止されたことにより、「自治体が行う事務はすべてが「自治体の事務」になりました。その自治体の事務は、自治事務と法定受託事務に区分されますが、これらにはほぼ全面的に議会の審議権、議決権、監査権などが及ぶようになったのです。(中略)このように自治体の事務の性格が変わることによって、議会の権限は、結果として強化されることになりました。それにともなって議会の責任も大きくなったのです。」 

 こうした、地方分権一括法が施行される前年の1999年以降、自治体議会に関する地方自治法の度重なる改正は、急進的でありかつ多角的であったとの印象を筆者は受けたものである。

 その結果、「このように分権改革によって自治体の責任、とりわけ事務の性格変更にともなう議会の責任は、従前とは比較にならないほど重くなりました。栗山町議会は、こうした分権時代における自治体の自立と自律の責任に対応できる議会への自己改革を強く意識するようになったの」 である。

 その相乗効果として、栗山町議会や伊賀市議会等先進的とされる自治体議会では、あたかも議会間で競争が行われているかのように、その改革が種々行われてきて、今後もつづいていくと筆者には思われるのである。

第2章 議会改革
 議会改革は、多くの場合、地方分権時代における議会責任の増大化を全うさせるためのものと行財政改革の要請に応えるかたちで行われてきたものと、大別して二つの理由があるもののようである。そのうち、議員定数や議員報酬の削減や日当の廃止などは、後者の理由によるものである。

 「けれども、経費の削減にのみ主眼をおいた効率改革に終始すれば議会は衰弱の一途をたどるしかありません。そこで、定数や費用などの議会資源が縮小することと、分権によって議会責任が増大することのギャップを埋めて、存在感のある代表機構として自己再構築することが、真の議会改革の課題とな」 ってきたのである。

 このような環境下において、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会の議会3団体は、それぞれ、これからもつづく地方分権時代において理想とされる自治体議会のあり方を求めて報告書をまとめ、それぞれの議会に送付している。

 2006年4月、町村議会議長会は最終報告書として「あるべき議会像を求めて」とのサブタイトルをつけた「分権時代に対応した新たな町村議会の活性化方策」をとりまとめた。
この報告書の内容は、1,地方自治制度の根幹にかかわる制度改革(制度の選択性、議会の構成、議会の機能)、2,二元代表制下での基本事項(議会と長の関係、住民投票制度)、3,議会運営上の活性化方策(討議の活発化、住民参加、議会事務局)、等である。そこでは、特に現行の地方自治法、会議規則にとらわれない新しい発想に基づく改革を提案している。

 「そして、これらの改革が後退しないように、議員の認識を強固にし、しかも、住民に分かりやすいように、条例化する、「議会基本条例」の制定が進められている。」 

 こうした、議会基本条例制定の象徴的存在を担っているのが、栗山町議会である。 次章において、同町議会が議会基本条例をどのようにして制定させることができたのかを概観してみる。

第3章 栗山町議会
 「栗山町議会は議会基本条例の制定に先立って、用意周到
に議会改革を進め」 たもののようである。 

 議会基本条例に先立ってその地ならしをするかのように、同町議会は、2002年に「情報公開条例」を制定している。これはまず「議会情報公開条例」として議会が提案した条例案に、あとから行政が加わることによって制定されたものである。それから、4年半にわたる議会改革を積み重ねることで遂に「議会基本条例」が制定されたのである。 

 なお「議会基本条例」を制定するにあたり、その主な背景と動機には、すでに前章で議会改革を概括的に見た際にもふれた、1,地方分権時代における議会責任の増大、2,財政事情の窮迫に起因する議会改革の加速化の要請の2点があったことも見逃せない。これに加えて、市川太一教授は、市町村合併によって議員数が減り、議員は一つの地域の代表というわけにはいかなくなり、多様な意見を一つにまとめることがまちづくりに必要だ、という京丹後市議会大同衛議員の発言を紹介している。 

 そのうえで、栗山町議会には、議員間での危機意識、改革意欲が共有されていたこと、橋場利勝議長の強い指導力、議会事務局の中尾修事務局長が議会の専門家として長年にわたって議会改革を志向してきたことも見逃せない要素としてあった。

 「そして改革が進むにつれて、町民の共感と評価が高まり、これが議会にとっての精神的な拠りどころになって、さらなる改革が」 続けられ、議会改革における好循環が議員と町民との間に形成されるに至ったのである。

 議会と町民との間にこのような良き関係を育むのに際しては、「議会から町民への情報公開と議会への町民参加」 が、円滑かつ的確に行われたことが大きく寄与しているものとみられる。

 こうして、2002年から始まった栗山町議会と町民との関係良化とその深化発展の過程で、3年間が経過した「2005年春ころから、議会内外で議会基本条例を制定しようという話が出てき」 たというのである。それを件の橋場議長は、「これまで重ねてきた改革を風化させないで、今後も安定的に持続させ、さらに必要な改革を継続するために、議会基本条例という法形式によって改革の理念と成果を制度化しておくのがよいのではないか、と考えるようになった」 のだという。

 これこそ、議会基本条例を制定するにあたっての一つの理想形といえよう。したがって、「しっかりした理念のもとに個別の改革を積み重ね、そうして定着した新しい議会運営の慣習を総合化し、成文法化するのが議会基本条例制定の理想的な姿です。各論に実体がともなわない、すなわち、具体性を欠いた基本条例は、「生ける基本条例」にはなりません。」 との神原教授の発言が、説得力をもって聞くものに届くのである。

第4章 議会基本条例の構成と特色
 注13で挙げたように栗山町は、横須賀市議会、須賀川市議会に次いで議会基本条例を制定したのであるが、「栗山町が最初に議会基本条例を制定したこともあり、いずれの市町とも栗山町を参考にして条例を作成している」 と市川教授は指摘している。

 市川教授の指摘は事実とは異なる部分があるものの、実際のところは、市川教授が指摘するように、栗山町議会の議会基本条例を参考にして、他の自治体議会では議会基本条例を作成しているものと推測される。本章では、栗山町議会の議会基本条例を中心に、他の自治体議会基本条例も含めて逐条的に検討をくわえたい。なお、その際、議会基本条例は、各議会等のHPに掲示されているものを対象とした。

1 前文−議会基本条例は何のためにつくったのか
 前文において、当該自治体議会が何を志向し、どのような役割を担おうとしているのか、それを明らかにしているものが多く見受けられる。
 栗山町議会は「自治体事務の立案、決定、執行、評価における論点、争点を広く町民に明らかにする責務を有している。自由かっ達な討議をとおして、これら論点、争点を発見、公開することは討論の広場である議会の第一の使命である」と討論を重視している。

 それに対して、湯河原町議会基本条例では、「議会は、二元代表制の下で、執行機関たる町長及び各種委員会を監視する」とあるように、議会の監視機能を重視している。

 京丹後市議会基本条例では、2条で議会は、「市長等執行機関の市政運営状況を監視するものと」している。
いずれにしろ前文では、自治体議会が執行機関への監視機能を重視していることをうたっているものが多くみられる。

2 目的
 伊賀市は1条で、「この条例は、議会運営及び議員に係る基本事項を定め、議会及び議員の活動により、“ひとが輝く、地域が輝く”伊賀のゆたかなまちづくりを実現することを目的とする。」とうたっており、その目的は明確化されている。

 今金町議会は1条で、「今金町に暮らす全ての人たちの町民福祉が向上し、安心して楽しく生活できる豊かなまちづくりの実現に寄与することを目的とする」と、同じようにその目的を明確化している。

3 議会・議員の活動原則
 議会と議員の二つの活動原則から構成されているものが多い。
 今金町議会は2条で、「議会は、議員、町長及び執行機関の長並びに補助機関である職員(以下「町長等」という。)、町民による「まちづくりの討論の場」である」と規定することで、議員、町長、職員の役割を明確化し、町民も交えた「まちづくりの討論の場」としている点に特徴がある。

 栗山町議会では、2条2項に、「条例をふまえて別に定める栗山町議会会議規則(昭和63年規則第1号)の内容を継続的に見直すものとする。
3 議長は、別に定める栗山町議会傍聴規則(平成2年規則第1号)に定める町民の傍聴に関し、傍聴者の求めに応じて議案の審議に用いる資料等を提供するなど、町民の傍聴の意欲を高める議会運営に努める。
4 議会は、会議を定刻に開催するものとし、会議を休憩する場合には、その理由及び再開の時刻を傍聴者に説明するよう努める。」としており、傍聴者に対して格段の配慮をしているのが、特長となっている。

 また、伊賀市議会では、5条に「議会の会派は、政策を中心とした同一の理念を共有する議員で構成し、活動する。」とあり、会派は「政策を中心とした同一の理念を共有する議員で構成」する旨が規定されている。これは、たんなる人間関係による会派構成を否定しているもののようであるが、議会運営のために、政策が若干異なる議員同士によっても会派が構成される場合もあるので、右の理念のみによる会派構成に関して、筆者は他自治体議会で議会基本条例を制定する際には、再考の余地があるものと考える。

4 市民(都道府県民・町民・村民等を含む)と議会の関係
 議員が自ら、市民に対して、議会報告会を開くことを規定している。

 栗山町議会では、4条で、「議会は、議会の活動に関する情報公開を徹底するとともに、町民に対する説明責任を十分に果たさなければならない。」としたうえで、同条7項で「町民に対する議会報告会を少なくとも年1回開催して、議会の説明責任を果たす」としている。このように、議員が市民に対して説明責任を果たすことが求められているのは、時代の趨勢からみて当然のことであるが、多くの議会ではそれは達成されていない。

 栗山町議会では、そのうえに、同条2項で「議会主催の一般会議を設置するなど、会期中又は閉会中を問わず、町民が議会の活動に参加できるような措置を講じるものとする。」という一般会議という制度をつくっているのも、目を引く。

5 議会と行政との関係
 伊賀市議会では、9条に(議会審議における論点情報の形成)として、下記の論点を抽出して掲示している。

 「議会は、市長が提案する重要な政策について、議会審議における論点情報を形成し、その政策水準を高めることに資するため、市長に対し、次に掲げる事項について明らかにするよう求めるものとする。
 (1) 政策の発生源
 (2) 提案に至るまでの経緯
 (3) 他の自治体の類似する政策との比較検討
 (4) 市民参加の実施の有無とその内容
 (5) 総合計画との整合性
 (6) 財源措置
 (7) 将来にわたるコスト計算」

 この条項には、筆者は現議員として羨望の念を覚えさせられた。なぜならば、この基本条例があれば、行政がどんな意図でその政策を施行したいのか、あらためて質疑や一般質問で取り上げなくても済むからである。

6 自由討議
 栗山町議会では、第5章において、自由討議の拡大(自由討議による合意形成)として、9条でつぎの規定をしている。
「議会は、議員による討論の広場であることを十分に認識し、議長は、町長等に対する本会議等への出席要請を必要最小限にとどめ、議員相互間の討議を中心に運営しなければならない。」

 上に引用したように、栗山町議会では、議員間の自由討議を中心に運営することを念頭に置き、自治体議会は長への質問や質疑のみを重視しようとする姿勢を批判しているかのようである。

 なお、今金町議会では、栗山町議会にあった「町長等に対する本会議等への出席要請を必要最小限にとどめ」を削除し、「議会は、議員による討論の広場であることを認識し、議長は、議員相互間の討議を中心に運営しなければならない。」としており、栗山町議会とは認識の違いをみせている。

7 委員会の活動
 栗山町議会にはないが、伊賀市議会は委員会の活動を13条において、つぎのように規定している。「委員会は市民からの要請に応じ、審査の経過等を説明するため、出前講座を積極的に行うよう努めるものとする。」

 このように、伊賀市議会ではここでも市民からの要請に積極的に応じる姿勢を、みせている。

8 政務調査費
 栗山町議会では、町民への報告書を義務付けている。

9 議会及び議会事務局の体制整備
 伊賀市議会では、15条でつぎのように規定している。「議会は、議員研修の充実強化に当たり、広く各分野の専門家、市民等との議員研修会を年1回以上開催するものとする。」

10 議員の身分及び待遇、政治倫理
 議会基本条例では、議会は行政からの独立性を確保したいというかなり強い意識を反映させたものとなっている。たとえば伊賀市議会においては、20条でつぎのように規定しているからである。「議員定数の改正に当たっては、行財政改革の視点だけではなく、市政の現状と課題、将来の予測と展望を十分に考慮するものとする。」

 このように、議員定数に関する条文の中に明確に、議会が行政に拘束されまいとする意思を感得することができる。

11 最高規範性と見直し
 議会基本条例が、議会運営における最高規範であることが定められている。それは、伊賀市議会基本条例でつぎのように記されているからである。「この条例は、議会における最高規範であって、議会は、この条例の趣旨に反する議会の条例、規則等を制定してはならない。」

第5章 議会基本条例の展開
1 自由討議
(1) 一問一答
 栗山町議会では、議会基本条例の制定をもって一問一答形式によって、議員と町長及び執行部との議論が行われることとなった。 

 日本の場合、多くの自治体議会では、議員と長等との議論は、まず議場壇上にて質問や質疑の項目を羅列して発言を行った後、自席に戻り、そこで初めて長等との一問一答形式による議論が始まることになるため、どうしても議論が拡散してしまうことが多いが、栗山町議会のように初めから一問一答形式をとることによって、議論が収斂されたものとなり、緊迫感をもった議論が展開されているもののようである。

(2) 反問権
 議会基本条例の特徴に、一つは上記「一問一答」が挙げられるが、もう一つは、この「反問権」 が挙げられる。
 これは、本会議又は委員会での長等の発言は、通常、議員の質問あるいは質疑への答弁という形式をとることが多いが、反問権が長等に付与されたことにより、長等は議員の発言に対する疑問等を直截議員に反問することができることになるため、議員から長等への一方通行的な議論から双方向的な議論へと、議論が活発化、深化されることへ資するものと期待できる半面、議員にも相当の事前準備が強いられるという副産物ももたらされるものと考えられる。

2 議会報告会
 2004年のデータであるが、全町村2497中128町村、比率でいうと7.5%の町村しか、議会または委員会主催による住民懇談会又は議会報告会が開かれていない。 議会報告会は、その後、増えていることが予測でき、市を加えると実際のところはもっと多くの自治体で実施されているのであろうが、それにしたところで、実施している自治体は全体からみるとさほど多いわけではないというのが実態であろう。

 栗山町議会での議会報告会 は、議会における一般質問とそれに対する答弁、予算の審議状況など、その年度を総括的にまとめるものとなっている。

 ただ、市川太一教授が指摘するように、議会報告会は、「議員と市民相互に負担が大きいと思われるが、両者に意味があると思われる」 ため、その負担を超えてそれでもなお、自治体議会から市民への情報提供、市民から自治体議会への情報提供という、議会と市民との双方向性を確保する上から重要視できる。

 あるいは、議会報告会でも長が行うタウンミーティングでも、どちらも市民から行政への声の集約であり、自治体議会や行政から市民への意見伝達という制度であるため、その観点での違いが、明確化されていない憾みがある。

 また、議会報告会では当然のことながら議員に説明責任が求められるが、説明が決して巧いとはいえない議員が実際に存在するところから、それとは反対に説明の巧い議員と説明の巧くはない議員が同席した場合、どのようにしたら両者をイコールフッティングな関係にするのかという課題も残されている。

3 一般会議
 栗山町議会は、議会報告会のほかに一般会議を設置している。その理由は、つぎのとおりである。
「議会では、栗山町議会基本条例に基づき、町民の皆さんの希望に柔軟に対応するため、議会と住民がいつでも意見交換することができる一般会議を設置しています。 
一般会議は、議会への町民参加の機会を設けるとともに、多様な住民の意思・意見を聴取し、そこから発生する町政上の課題に対応するための政策提案の拡大を図ることを目的としています。 

 団体、個人グループなどからご希望があれば、可能な限り対応したいと考えています。また、その時々の町政上の問題によっては、議会からも声を掛けさせていただくこともあります。」 

 一般会議は、ウェブサイト上では、2006年から2009年にかけて16回の一般会議が開かれたようであるが、そのうち一般市民を対象にしたものは1回しかないので、それをもっと増やすのが、一般会議には相応しいのではないのか、と筆者は考えた次第である。

第6章 議会基本条例の意義と課題
 議会基本条例の構成を章ごとに検討したが、条例の制定によって、議会や議員のあり方、議会や議員の仕事の明確化等、あるいは、住民の意見の聴取や議会のもっている情報の住民への開示等評価できる点は多々ある。

 さて、自治体には政治機関として、議会が設置されている。議会は、議事機関であるに止まらず、(条例等の)立法機関、監視機能、教育機能と幅広いものが期待されている。 

 議会は、もう一つの政治機関である、長という執行機関と抑制均衡関係を保ちながら、民意を反映させることが期待されているものでもある。つまり、日本の自治体議会は執行権をもたない議会制度となっている。

 そのような日本の自治体議会において、議会が実質的な権限を議会基本条例によってもたらされた際に、自治体議会はいったいどこがチェックするのか、という問題が新たに出来されるとおもわれた。

 また、議会基本条例を定めた議会は、実態としてさほど多いとはいえないのであるが、議会基本条例を定めるのが目的化してしまい、実際の議会改革が一向に進んでいない自治体議会もあるのではないのかと考えさせられた。

 逆にいえば、議会基本条例を定めることなく自治体議会を改革させることも、決して不可能ではないと確信した次第である。

参考文献
兼子仁『新 地方自治法』(岩波書店、1999年)
美濃部達吉『日本行政法 上巻』(有斐閣、昭和16年版)
加藤幸雄『議会基本条例の考え方』(自治体研究社、2009年)
神原勝『増補 自治・議会基本条例論』(公人の友社、2009年)
市川太一「議会基本条例の構成と具体的な展開」『慶應の政治学 日本政治』(慶應義塾大学法学部発行・慶應義塾創立150周年記念法学部論文集、2008年)
佐々木信夫『現代地方自治』(学陽書房、2009年)