町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

立教大学 経済学部「経営管理論」夏季リポート大学での活動

2000.08.01(火)

機関:立教大学 経済学部専門教育科目
学科目:「経営管理論」
開講学期[単位数]:2000年度 通年[4単位]
担当:百田 義治 教授(駒澤大学 経済学部)
参考図書:深尾 光洋『コーポレート・ガバナンス入門』(筑摩書房、1999年)

1. 始めに
 米国発の”global standard”が日本へ押し寄せ、席捲している。曰く、「国際的な大競争の時代に、これまでの日本的なやり方は通用しない」「株価を最大にする経営をしないと、資本市場が許してくれない」といった具合に。

 たしかに、情報技術(IT)革命に成功し、世界の景気を牽引している米国は、好況に湧いている。対して、日本はバブル崩壊後、その後始末に追われ不良債権問題は未だ解決しておらず、貸し渋り等で金融機関は正常に機能しているとはいえない。従って、ごく一部の企業を除いて、大部分の企業と家計は長く続く不況に苦しんでいる。依って、このバブル崩壊後の10年を”lost10years”と称されてしまう。

 だが、日本企業で働く多くの社員は釈然としていない。自分たちの会社だと思っていたのに、それは今や株主のものだという。株主はカネを出すだけだが、社員は人生を賭けているのだ。

 旧来からの日本型経営は、従業員を主、株主を従と位置づけ、安定した人のネットワークを重視してきた。だからこそ、日本企業の社員は、給料以上のエネルギーを仕事に注ぎ、技術や知識を社内に蓄積したのだ。
 ここで言い添えたいのは、グローバル化は決して新しい動きではないということ。ところが基礎的な訓練を経ない人にとってのグローバル化は、順応できない結果を生みやすい。

 以下、コーポレート・ガバナンスの面から日本企業に内在する問題の所在に関して、金融機関を主として考察する。

2. 日本型企業の特徴

 従来から言われる日本型企業の特徴は数多くあるものの、枢要な点は以下に集約される。
1) 終身雇用制度。企業がある程度利益を犠牲にしても、正社員の長期安定的な雇用と年功に応じた収入を保証する。

2) メインバンク制。企業が一つないし少数の銀行と、株式の持ち合いや借入などの長期的な取引関係を結び、経営が困難になった場合に支援を受けようとする。

3) 企業系列。企業間取引においても、外部の企業と長期的な取引関係(一部に株式の持ち合いを含む)を結んで企業グループを形成する。

 しかし同時に、1997年までの急速なアジア経済の発展に伴う製品輸入の増加、バブル崩壊や規制緩和に伴う経済環境の激変、人口の急速な高齢化など変化の激しい経済環境下では、日本的な企業システムは必ずしも良好なパフォーマンスを維持できないとの見方が、強まってきている。

3. 株式会社の経営監督機構における主要先進国間比較

 日本、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスの先進主要5カ国の会社の経営管理の仕組みを見ると、日本型、米英型、ドイツ型の3つに大別することができる。
 そのうち、実際の経営を行う機能と、その監視を行う機能が一つの取締役会に委ねられている「単層構造」は、日本と米英両国の会社に当てはまる。ただし、日本では取締役が会社経営と経営の監視をともに行うという点では、単層構造だが、経営の監視を行う機関として監査役があるのが、独特のシステムを構成している。
 経営判断をして会社を運営していく取締役会の上に、経営を監視する監査役会を置く、二つの役割を別々の機関に任せる仕組みは、「二層構造」の会社と呼ばれ、ドイツとフランスの一部の株式会社で採用されている。

 スティーブン・カプランは、1980年代のデータをもとに、日米独の企業の収益と経営陣の交替の関係について、計量的な手法で分析した。その結果、株価が低迷した会社では、社外取締役(銀行や大株主とは一般に関係のない者)の任命(アメリカ)、銀行や大株主関係者による役員就任(日本)、新しい監査役の任命(ドイツ)など、経営陣の入れ替えが起こりやすいことを見出した。

4. 企業活動に規律を与えるコーポレート

・ガバナンス
 米英では規律を与えるメカニズムの一つとして、友好的な会社の買収を通じて、企業に最も高い値段をつける主体に、経営を任せる。

 一方、日独仏では、会社の経営に対する規律付けが、株主の交代に伴う経営陣の入れ替えではなく、株主と経営陣の間の直接的なコミュニケーションに依存してきた。

 従って、会社の経営陣の地位は、米英の方が日本より不安定である。米英の株式市場は、会社の経営権の市場として機能しているが、日本ではそうした機能は殆ど果たしていない。

5. コーポレート・ガバナンスの視点から見た金融機関の脆弱化と金融不安

 1997年11月の、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券の相次ぐ破綻は、日本の金融制度の基盤となる会計・監査制度、大蔵省や日本銀行による金融機関の監督体制、金融機関の財務諸表の3つに対する信頼を失墜させ、信用不安を引き起こした。

 信用不安の高まりは、先ず金融機関自らの資金繰りを逼迫させた。自分自身の資金繰りに安心できなくなった銀行は、貸出先の面倒を見ることができなくなり、貸出回収により自分自身の資金繰りを確保することを優先させた。
 これは、銀行貸出の縮小を通じて、日本企業ばかりでなくアジア諸国の資金繰りを悪化させ、企業の破綻、株価下落、アジア通貨危機の深刻化を引き起こした。株価の下落は、多額の株式を保有する銀行の自己資本の減少を招き、さらに銀行貸出の回収を招くという、悪循環が始まった。上場企業である大手金融機関の破綻は、大量の正社員の解雇を引き起こし、長期雇用を生活設計の前提としていた多くの大企業の従業員に対して雇用の安定への懸念を強めさせ、消費を萎縮させることで不況を深刻化させた。

 そもそも日本の銀行はその資産として、一般事業法人や海外の金融機関に比較しても、巨額の株式を保有している。

これは、日本独自のメインバンク制に起因する。このメインバンクという言葉自体に、そのものが包含する特徴が顕わている。つまり、メインバンクはあくまでも和製英語であって、英語ではないことから、優れて日本的な発想の下に作られたシステムだということ。

 ある銀行がメインバンクとなる場合、融資で筆頭シェアを有し、またその会社の株式を独禁法による保有限度の5%近く保有し、さらに場合によっては、銀行が企業に役員を派遣することを指す。
 企業は銀行とこうした関係を結ぶことによって、万一経営が悪化した場合に、資金繰りの援助を受けようと考えている。銀行は、企業のメインバンクとなることによって、企業に預金してもらったり、企業の従業員の給与振り込みを引き受けて、個人の顧客を増やしたり、輸出入などに伴う外国為替手数料を受け取ったりするメリットがある。
 このように巨額の株式を保有しているため、株価が下落すると、保有株式の時価も減少し損失を被る株価変動リスクを抱えている。こうして銀行は、株主安定化のための相互持ち合いと、取引先企業との関係構築の二つを主な目的として大量の株式を保有してきた。しかし、後者についてみると、かつて銀行の主な取引先であった大企業は、銀行借入から資本市場調達へとシフトした結果、銀行との関係は著しく弱まっている。

 その上、銀行の状況がバブル崩壊以降悪化してしまい、これに対して製造業の方は比較的好調だったので、製造業は銀行株を売って仮に銀行に自社株を売られたとしても、十分市場で吸収でき、いざとなれば利益で自社株を買い入れ償却すれば構わない。こうして、銀行株が持ち合いの相手から売られ始めた。このように、銀行と顧客企業との間の株式持ち合いが解消されるにつれて、徐々に生保の実績配当勘定、投資信託、年金基金などの、投資収益を第一とする投資機関の株式保有が増加していく可能性が高い。

 将来的には、すでに銀行部門の格付けが大きく低下し、銀行が企業の経営危機を助けることも困難になっていることを考えると、銀行がリスク管理上の必要性と大口融資規制の強化などから株式保有を減少させていけば、メインバンクが変更されるだけでなく、メインバンク関係自体が、全体として弱まることになるものと考えられる。

6.日本的経営と会社の利害関係者の相対的な位置づけ

 日本の企業においては、銀行などの債権者、コアとなる従業員(正社員)、経営陣、株主、パートなどの正社員以外の従業員の順に、企業の保有する資産に対して、優先順位を持っていると考えられる。しかし今後、企業間の株式持ち合い関係が弱まり、機関投資家株主が増加するに従って、従来より厳しい雇用調整を迫る株主の比率が増加することが予想される。

7. 日本企業のガバナンスの将来

 日本企業のガバナンス構造は、米国型にある程度近づいていくことが予想される。特に、従業員の雇用の安定性が弱まるほか、会社の純資産に対する株主の支配も強まるであろう。

 しかし、日米間の制度を比較すると、労働法規、会社法における経営陣の権限、破産法制の違いが数多く残されている。特に会社と従業員の関係について、慣行や社会的なコンセンサスに大きな差があることを考えると、日本の企業は当分の間、典型的なアメリカ企業とはかなり違った存在として活動していくものと、予想される。