町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

落語歳時記24 「落ちた選挙」らん丈の、落語歳時記

2002.03.01(金)

 現在ベストセラー街道を突っ走っている小説に、真保裕一の『ダイスをころがせ!』(毎日新聞社刊)があります。この小説は、リストラされた34歳の元新聞記者と元商社マンの二人が、故郷から衆院選に立候補する顛末を描いたものです。たしかに、毎日のように新聞紙面を賑わす政治家の収賄事件等、政治には古来薄汚いイメージがしっかりと国民には植え付けられています。それを打破するべく、政党に属さずに政界に打って出ようとする主人公には、共感するところが大きく、それだからこそ、この小説はベストセラーとして広く読者に受けいられているのでしょう。

 今年の2月に行われた町田市議会議員選挙に私、らん丈が無所属新人として立候補して、選挙の実態を知るにつけ政界への失望と、それを打破しようとする市民の力を強く感じたものでした。結果は、善戦空しくあと一歩力が及ばず、支援してくださった方々の期待を裏切ることになってしまいました。

 今、1週間に亘った選挙を振り返れば、立候補者本人にとっては、またとない貴重な体験をさせていただいたものと、感謝の思いでいっぱいです。その経験から言うと、選挙と政治は別物だということです。たとえば、普段の勉強は一切しない学生でも、試験で好い結果を修めれば好い成績がつくように、普段はほとんど政治活動をしていなくとも、選挙に勝てばその立候補者はめでたく当選してしまうという現実です。当たり前といえば、あまりにも当たり前のことですが、このことは、常に有権者は肝に銘じておいた方がいいでしょう。つまり、政治には疎くとも、選挙に強い候補者は勝つのです。尤も、選挙に負けた候補者がこんなことを言っても、負け犬の遠吠えにしか聞こえないでしょうが。

 さて、その選挙ですが、どの陣営も勝つためにはダーティーなことをしますね。たとえば、政策を記したチラシを各戸に配布する際、どうすると思いますか。他の陣営のチラシが入っていれば、まずそのチラシを抜いてから、自分のチラシを入れるのは、当たり前です。

あるいは、道行く選挙カー(宣車)を見かけたら、相手陣営であれば耳を塞ぎ、うるさいと叫び、それにしたがって宣車が音量を下げればしめたもの。とにかく、相手陣営の宣車の音量を下げさせれば、自陣営の宣車が目立つというわけ。こんなのはごくごくかわいいほうですよ。あとは、選挙事務所や宣車への夜間投石によるガラス破損、怪文書の配布、これも選挙にはなくてはならない、お賑やかしですね。もちろん、町田でも金銭による投票依頼はいまだにあります。私は天地神明に誓ってやってはおりません。やりたくても、資金不足でできない、というのが本音ですが。

 それにつけても思うのは、もしもある陣営から金銭を受け取ったら、その人はどんな投票行動をとるのかと言うことです。ぼくは、いまだかつて金銭を受けたことがないのですが、ぼくが金銭をもらったら、絶対にその候補者には投票しないでしょうね。他の方も当然そうなさると思いますが、そうすると金銭をまく候補者は、お金とともに票も失うのですから、今後そんなことは一切なさるまい。
かくのごとく、ろくな政治家しかいない日本の現状は、その議員を選んだ有権者にも大いなる責任があるということです。

 噺家がこんなことを書くのは余りに身の程知らずなので、これ以上は書きませんが、落語家=落とすのが商売なればこそ、選挙に落ちても一向に構いませんが、2年間に亘って連載した小稿が、今回を以ってお開きとなるのはあまりに辛い。本当にどうも有難うございました。また、どこかでお会いしましょう。