『都市』第77号・2020年10月
衣更消防団の階級章
裏庭に草茂り居る朝礼台
夏至の日や売るべき本を決めあぐね
紫蘇薬味少し多めに昼の膳
左見右見こはごは掬ふ泥鰌鍋
衣更消防団の階級章
裏庭に草茂り居る朝礼台
夏至の日や売るべき本を決めあぐね
紫蘇薬味少し多めに昼の膳
左見右見こはごは掬ふ泥鰌鍋
どこからかフルート聞こゆ苗木市
幾分か帽子目深に卒業生
花冷の茶会に向かふ兄いもと
師の前で若きままなる四月馬鹿
歯がなくも歯を食ひ縛る吹流し
好天に恵まれし日よ大根引く
春立つや広辞苑取る手も軽し
はうれん草箸伸ばす手は真つすぐに
リハビリに励む犬にも春来たる
春の蚊を眼で追ひて犬走り出す
柿落葉はさみ閉づるは福音書
茶の間にていびきかく妻御代の春
ぼろ市や一度帰りてまた向かふ
鮮やかな初夢見たり酒を断つ
初詣同級生へ手を挙ぐる
栗御飯栗から食ぶる夜更けかな
稲刈りて萬年筆を買ひに行く
草紅葉友ゐない子を迎へ入れ
ドラマでは易く人死ぬ根深汁
飼犬の留守番つとむ七五三
遮断機や汗拭ふ人見つめをり
披露宴遅刻する夢残暑の夜
吊橋を親子でわたる終戦忌
洗濯の深夜に及び星月夜
靴の紐締めてゐる間の流れ星
ミサののちふらここを漕ぐ神父たち
蕗噛みて忘れたきこと忘れけむ
勝ちて泣く石榴の花に見つめられ
七夕に男二人で映画観て
雪渓の足跡深く交錯す
手の甲に心覚えや新入生
雁風呂や帽子おさへて急ぎ足
啄木忌震へる手にて書く日記
愛鳥週間啄木の歌集手に
閉店を知らず訪ふ夏の霜
振り向かずとも富士のある冬の空
犬二匹耳そばだてる初音かな
雲間より陽の輝きて大試験
波を見て逃ぐる子のゐる磯開き
初蝶に大気揺れゐて日も揺るる
学び舎に法の意味知る隙間風
冬の夜寝てゐる顔は嘘つかず
お揃ひのセーター着込み寝台車
起き上がる覚悟もなくて初寝覚
両手持て成人式の握り飯
町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打