町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

はるかぜ vol.15 2013年10月号市政報告『はるかぜ』

2013.10.01(火)

・町田市議会改革
・議員提出議案 その2

町田市議会改革

1、議員とは、なにか

 らん丈がつとめている市議会議員は時として、国会議員と同様に政治家ともよばれますが、そもそも、議員に課せられた存在理由はなんでしょうか。

 それへのもっとも一般的な回答は、法律をつくるのが国会議員の本義であり(※1)、地方議会の議員は「条例を設け又は改廃すること」(地方自治法96条1項1号)に、その本義がある、というものでしょう。

 これをちがう言葉でいえば、国家権力は立法、行政、司法の三権によって構成されていますが、このうちの立法を担っているのが議員ですから、立法、つまり法律をつくるのが、議員の役割という説明ができます。

 しかし、これでは、いささか現実とは程遠い説明と思われたかたがいらっしゃるのではないでしょうか。

 それならば、次のような説明ではいかがでしょうか。西洋の政治思想史や現代政治学における政治の概念を最大公約数的に概括すると、その中心にあるのは、「意見や利害が異なる複数の人間の間で秩序を形成・維持・変容する営み」という説明です。(川崎修(立教大学教授)『岩波社会思想事典』)

 これは、現実に馴染みやすい説明ですね。たとえば、ある市の市役所を建て替えるか否か、が議論される場合には、結論はそのどちらかのうち、ひとつしかありません。それに関する法律は、地方自治法でいえば、下記の条項が該当し、次のとおりです。

4条  地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない。

2  前項の事務所の位置を定め又はこれを変更するに当つては、住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない。

3  第一項の条例を制定し又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。

 上記のように、市役所は「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払」ったうえで、「当該地方公共団体の議会において出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない」のです。

 こうして、その市では、さまざまな意見や利害が異なる複数の人間の間で、秩序を形成・維持・変容させるために、議会で議員が議論し、その後おこなわれる表決(賛否)によって、その議会の意思が示されるところとなるのです。

 このように、政治とは、なにかを決めることであり、それを実行するのは、行政です。これを取り違える方が、少なからずいらっしゃいます。議会には、執行権はないのです。

 施策を執行するのは、行政ですから、町田市の場合でいえば、町田市議会ではなく、町田市が執行権者となるのです。

 国のことを考えれば、理解しやすいでしょう。つまり、国会が法律を制定し、法律の内容に則してそれを実行するのは、行政府である内閣です。

(※1) 憲法41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

2、議会とは、なにか

 それでは、議員によって構成される議会とはなんでしょうか。国会の場合であれば、次のような説明があります。「公選された議員を要素とし、かつ法律や予算の制定のような重要な国家作用に決定的に参与する権能を持つ合議体」。

 あるいは、次のように認識している方がいらっしゃるのではないでしょうか。「住民の代表である議会」、「住民意思を代表する議会」、「住民の代表たる議員で構成される議会」。しかし、議会は、「住民意思を代表する機関」が正しい認識です。

 つまり、辻山幸宣(地方自治総合研究所所長)によれば、議員は住民の代表ではないというのです。辻山先生は、次のようにおっしゃっています。「議員は代表しません。議会という合同行為機関が代表する」。

 ここで大事なのは、議会が議案にたいして、どのような表決をおこなったのか、ということです。それに関しまして、町田市議会は、市役所が新庁舎に移転したのにともなって、議場における表決の結果は、市議会のHPに掲示するようにいたしましたので、それをごらんいただければ、各議員の表決の結果をみることができます。

3、議員提出議案第15号

 わが会派は、町田市議会を改革したいという意思のもと、2013年第3回定例会(9月議会)において、議員提出議案第15号を提出いたしました。それは、「町田市議会議員定数条例の一部を改正する条例」というもので、内容は下記のとおりです。

町田市議会議員定数条例(昭和48年9月町田市条例第42号)の一部を次のように改正する。
本則中「36人」を「34人」に改める。
 附則
この条例は、次の一般選挙から施行する。

 これは、地方自治法の改正をうけた提案です。つまり、1999年の地方自治法の一部改正前までは、地方自治法が各議会の議員の定数を法定していましたが、地方公共団体の自己決定権を高める見地から、同年改正で条例定数制度が採用されたのです。当初は、地方自治法に定められた上限数を超えない範囲内で、各議会はその議員定数を定めなければならないとされていましたが、2011年の地方自治法改正により上限枠が撤廃されたことにともない、町田市議会は現在36人いる定数を2人減らして34人にすることによって、議会自らが改革を進捗させようという主旨の議案です。

 この議案は、町田市議会総務常任委員会において、9月12日に審査されました。その際、らん丈は議案提出者のひとりとして、答弁にあたり、同委員会においては、審査の結果、原案を可決すべきものとの結論をいただきました。その後、この議案は、町田市議会本会議において表決されることでその帰趨は決します。


議員提出議案 その2

1、議案提出権

 地方自治法によれば、議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができます。それは、次のとおりに記されています。

第112条  普通地方公共団体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる。但し、予算については、この限りでない。
2  前項の規定により議案を提出するに当たつては、議員の定数の十二分の一以上の者の賛成がなければならない。

 上記にあるとおり、議員提出議案は、議員ひとりで提出できるものではありません。町田市議会の場合、議員定数は36人ですから、その12分の1にあたる3人以上の賛成がなければ、議案を提出できないのです。議案に賛成する際に、議員は署名によって賛成の意をあらわします。その場合、たいていは、筆頭署名した議員がその議案に対して中心的な責任を負うことが、町田市議会では暗黙のルールとなっています。

 ちなみに、らん丈が筆頭署名した議員提出議案は、17議案あり、そのうち14議案は賛成多数によって可決成立しており、うち9議案は全員一致をもって原案のとおり可決いたしました。たとえば、2012年9月定例会に提案した議員提出議案21号「不活化ポリオワクチン等の定期接種に関し、公費負担の見直しを求める意見書」は全員一致をもって原案のとおりに可決いたしました。

 このように、らん丈が筆頭署名をおこなった議員提出議案は、決して少なくないものであり、そのうち多くの議案は可決成立していることを申し添えさせていただきます。

2、議案に賛成するということ

 町田市議会では、昨年(2012年)の新庁舎への移転にあわせて、本会議における表決の結果を公表するようになりました。それをみると、市長が提案する議案は、多くの場合、可決成立していることに気づかされるでしょう。

 これは、国会においても同様でありまして、第1回国会から第173回国会までの閣法とよばれる内閣提出法案の提出件数は9,190件、成立件数は7,856件、成立率は85.5%となっています。それに比して、第1回国会から第173回国会までの衆議院議員提出法案と参議院議員提出法案の合計の提出件数は4,794件、成立件数は1,364件、成立率は28.5%でした。このように、閣法にくらべて、議員提出議案の成立率はきわだって低いものとなっています。

 憲法93条2項によって、地方自治体の議会は、執行機関の長と議事機関である議会の議員をそれぞれ住民が直接選挙で選出する二元代表制をとっており、執行機関と議会は独立・対等の関係に立ち、相互に緊張関係を保ちながら協力して自治体運営にあたる責任を有しています。このように、議院内閣制をとる国会とはその構造は異なるものの、町田市議会でも、国会の内閣提出法案に該当する市長提案の議案の可決(成立)率にくらべて、議員提出議案の可決率は、低いものとなっています。

 議員提出議案の低い可決率にくらべて、市長提出議案の高い可決率をみると、議会は市長と、「相互に緊張関係を保ちながら協力して自治体運営にあたる責任を有してい」るにもかかわらず、それを果たしていないのではないか、という疑念を抱かれる方がいらっしゃるのかもしれません。

 それに関して、辻山幸宣(地方自治総合研究所所長)は、このようにいっています。

「あなたが家族の中で何か大きな買い物をしたいというときに、家族の中で相談するでしょう。例えばご主人と相談して「これを10何万で買いたいんだけど」といったときに、ご主人が「うん」といったら、何も考えていないといって怒るでしょうか。つまり、こういうことなのです。提案された議案が今の要請に応えているものか、いい議案であるのかどうかということを吟味して、だめならば質問をして修正を求める。概ねいいではないかと考えたときにうなずく、賛成という行動をとる。「賛成という行動そのものも立法行為です」と、私はいっているのです。立法行為というのは条文案を書くことだけじゃない。出された立法案が、これは賛同するに値すると判断をして、いわば住民意思の代表権みたいなものをそこで行使する。これは立法行為ですというふうにいっています。問題なのは、何も考えずに「いいだろう」といっているかどうかなので、十分それを監視してもらいたいとお願いしております。そのようないわば市民の間の誤解のような世界を引き受けながら、これからなお新しい時代の自治体議会になっていくのは大変なことだというふうに思っています。」

(第82回都市行政問題研究会総会講演「分権時代における市議会のあり方-「新しい公共」と協働型自治への道程-より)