町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

一橋大学 国際・公共政策大学院「国土交通論」期末リポート大学での活動

2012.01.31(火)

箇所:一橋大学 国際・公共政策大学院 公共法政プログラム
   一橋大学大学院 法学研究科 修士課程・博士後期課程
科目:「国土交通論」
科目の種類:事例研究
開講学期[単位数]:2011年度 冬学期[2単位]
担当:黒田 昌義〈内閣官房副長官 秘書官兼内閣総務官室 内閣参事官〉先生
課題:東日本大震災に関する復旧復興対応や国土交通政策に特に関心を持った事項の現状と課題、今後の政策の展開の方向性などについて。
特に関心をもった授業:授業日12月1日「国土交通行政と震災ボランティア」
題目:『東日本大震災を受けてボランティアの新たな活用に関する一考察』
指定分量:A4判5枚程度

【構成】
1、東日本大震災による消防職員と消防団員の被害状況
2-1、被災地でのボランティアニーズ
2-2、被災地以外でのボランティアニーズ
2-3、行政が機能しなかったためボランティアに頼らざるを得なかった事情
3、減少するボランティア
4、大震災に対応できない行政
5、ボランティア活動を経験した学生
6、ボランティア活動を促す誘因
6-1、機能別消防団
7、今後の政策
なお、注の部分は省略した。

1、東日本大震災による消防職員と消防団員の被害状況
 さる12月16日に、総務省消防庁は、平成23年度版『消防白書』を公表した。それによると、東日本大震災によって殉職されたり行方不明になられた消防職員は、岩手、宮城、福島の3県を併せると27人に上ることが判明した。

 それに対して、同じ3県の消防団員における被害者は、254人にも達した。つまり、消防団員の被害者は、消防職員の約9.4倍に及んでいたことになる。

 消防団員とは、いうまでもなく、特別職の地方公務員であって、それは非常勤であり、消防職員のような一般職の地方公務員とは峻別される者である 。

 消防団員は、非常勤とはいえ地方公務員であるために、その報酬の額は、地方公共団体の条例によって定められている。非常勤のため当然ながらその額はきわめて少額であり、それによって生計を営めるものではない 。

 ここであらためていうまでもなく、消防団員は生業に就きながら、ボランティアでその任に当たっている者である。それでいながら、東日本大震災発災後3ヶ月間に救急出動した件数は、上記3県で4,500件超にも達した。たとえば、岩手県での「消防団による広域応援活動」は、延べ1,466人にも達したのである。
 このように、ボランティアでその任に当たっている消防団員は、東日本大震災の際にはすこぶる旺盛な活動を行った結果、津波等の被害に遭い、極めて甚大な被害を蒙ったのである。

2-1、被災地でのボランティアニーズ
 東日本大震災の被災地では、ボランティアに対するきわめて多種多様なニーズがあった。被災地は、いまだ復興されていないためそのニーズのほとんどは現在もあり、そして将来においても引き続き同様のニーズは強固に存在するであろう。

 それらのニーズのうち、たとえば、体力を要するものとして、津波直後では、泥出し、瓦礫撤去、炊き出し、物資の仕分け、冬季であり被災地が寒冷地のため足湯の設置と介抱、写真等の洗浄(思い出探し)、引越し手伝い等があげられる。

 プログラム系では、お茶会の設置及びおもてなし、子どもの遊び支援、学習支援、お年寄りの傾聴、レスパイトケア等があげられる。

 専門系では、医療・看護、外国語・手話の通訳、栄養指導、カウンセリング、整体マッサージ。その他、避難所運営、HPの作成等の情報ボランティアなど、じつに多種多様なボランティアを、被災地では必要としている。

2-2、被災地以外でのボランティアニーズ
 ボランティアへのニーズは、なにも被災地に限られたものではなく、被災地以外においても、おなじように存在する。たとえば、被災地からの避難者がいる場合には、泥出しや瓦礫撤去を除いては、被災地と同様のニーズが存在する。それ以外にも、被災地への支援物資の仕分けとその荷造り。あるいは、被災者の受入(一時滞在、レスパイトケア)も重要なニーズをなす。
 特に、被災地に支援物資を送る際、その物資の仕分けや梱包にはボランティアの多大な協力を必要としたことは、筆者も実際に同作業に従事したため、実感として理解できたことである。

2-3、行政が機能しなかったためボランティアに頼らざるを得なかった事情
 東日本大震災によって甚大な被害を蒙った被災地では、地方公共団体による行政機能が喪失してしまい、その機能がまったくの不全に陥ってしまったところがあったことも、今回の大震災の特徴として挙げられる。

 その例として、行政のトップである長が死亡した岩手県大槌町のような地方公共団体があった。また、津波による被害では、岩手県陸前高田市や大槌町、宮城県南三陸町のように、庁舎が壊滅してしまった自治体もあった。福島県では東京電力の原発施設周辺にある8自治体が住民とともに役場機能ごと避難し、大熊町は田村市に、双葉町は県外のさいたま市に移転するという前代未聞の事態も生じた。

 このような事態に陥ってしまったため、基礎自治体は、行政を補完するものとしてというよりは、なかには代替するものとしてボランティアに頼ったところもあったものと思われる。

 その例として、「被災地では寺社やホテルなど指定場所以外でも避難所ができ、それを役場が把握できない事態も発生。救援物資の確保や避難所への搬送に必要な情報を役場が集約できなかったり、集落に取り残された住民の救助要請を出せなかったりする状況も各地で生じた」 ことが挙げられる。

3、減少するボランティア
 全国社会福祉協議会によると、今年の1月8日現在、東日本大震災に関する、岩手、宮城、福島3県のボランティア活動参加者数は、90万500人であった(岩手県32万1,700人、宮城県43万4,900人、福島県14万3,900人)。

 それに対して、ピークだった昨年4月から5月にかけての大型連休には、1日1万人以上のボランティアが活動していた。夏休みにいったんボランティアは増えたものの、長期的にみれば減少傾向は変わらず、昨年の12月18日以降は1日1千人を割り込んだ。

4、大震災に対応できない行政
 すでに記したように、じつに多種多様なるボランティアニーズが存在し、それに応えるボランティアが存在するものの、震災ボランティアは本来、行政が担うべき業務ではないのかという疑問を持つ方もいらっしゃることと思われる。たとえば、避難所の設置、運営や、高齢者や子ども等被災弱者への生活支援は、本来であれば、国や地方公共団体が担うべきであるという声もあろう。

 あるいは、震災ボランティアは、他の経済主体に外部経済(external economy)を与える存在であることから、外部効果がある。これは、経済学でいう技術的外部経済といいうる。そこで、市場を通じ、商業ベースにのせたほうが、より効率的に運営されるのではないのかといった指摘もある。しかし、被災者の多くは、経済的にも困窮を極めているため、商業ベースに乗せることは不可能である。

 そもそも、行政だけで大震災に対応するには、自ずと限界がある。まず、充分な予算と人手がない。それは、震災の予測は事実上不可能であるため、当該年度に震災対策の予算をあらかじめ計上することが、不可能だからである。

 それ以前に、今回の大震災のように、庁舎が壊滅したり、多数の自治体職員が死亡したり行方不明になったりした場合には、現在ある行政の能力だけで大震災に対応するのは、その能力をはるかに超えたことなのである。

5、ボランティア活動を経験した学生
 東日本大震災の被災地に駆けつけた大学生ボランティアを対象に、朝日新聞社は昨年12月に意識調査を実施した。以下の調査結果は、2012年1月13日付け同新聞朝刊の記事による。その際、回答した445人のうち9割が初参加で、ほとんどの学生が活動に満足し、今後もボランティアを続けたいと答えた。回答者の内訳は、女性272人、男性173人。平均年齢は20.93歳であった。参加の動機は、自発的とみられるものが6割に上った。

 被災地でのボランティアは、8割が「話し相手や遊び相手」として活動した。
 そのうち、全体の87%は「満足感を得られた」と回答し、「再び行こうと思う」学生は95%に達した。また、「新たな災害があった場合に行こうと思う」学生も9割を超えた。

 しかし、冬本番を迎え、被災地でのボランティアの人手不足は、深刻化している。そこで、大阪大学大学院の渥美公秀教授は同紙で、「せっかく一歩を踏み出した学生の意欲を継続的な支援につなげることが大切だ」と指摘している。

6、ボランティア活動を促す誘因
 上記のように、震災ボランティアは、それに携わることで9割近くの方々が、その活動をつうじて満足感を得られたことがわかった。

 また、ボランティアにみる民間の力が、大震災の際には必須であることは今さらいうまでもない。たとえば、先にあげた消防団は、大震災の際には、必要欠くべからざる機関である。その消防団とは、消防組織法 に基づいて各市町村に設置される消防機関であり、その担い手である団員は、特別職の地方公務員とはいいながら、実質的には、先述のように民間人である。

 ところで、消防白書においては、消防団の担い手が年々減少していることが指摘されている。それは、次のとおりである。「消防団員確保に向けた施策「消防団員は、常備消防の進展、過疎化、少子高齢化の進行、産業・就業構造の変化などに伴い、年々減少し、今では89万人を割る状況にあり、地域防災力の低下が懸念されている。」」 

 それに対して、消防団員の目標数は、次のとおりである。「消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており」 と指摘している。

 こうして、消防団員は目標数に達していないことが判明した。ボランティア活動を行うことで、それに従事した方々の9割近くが満足感を得ている調査結果から、消防団のような公的組織でも、それに加入する誘因をより強固にすることで、消防団員が増加することが考えられる。そのためには、これまで以上の、消防団入団への強い誘因が必要とされる。

6-1、機能別消防団
 そこで、筆者は、消防団員の処遇の改善 とともに、消防団組織・制度の多様化方策を検討、実施すべきものと考える。たとえば、機能別団員及び機能別分団とよばれるものをもっと積極的に活用するのも一つの方策であろう。ちなみに、機能別団員とは、次のようなものである。「すべての災害・訓練に出動する消防団員(以下「基本団員」という。)を基本とした現在の制度を維持した上で、必要な団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、次の多様化方策を導入した(平成23年度版『消防白書』より第2−1−15図)」 。

 このように機能別団員とは、「特定の活動、役割のみに参加する団員」のことであり、基本団員としては消防活動に従事できないものの、「特定の活動」に限定した団員であるならば、消防団に入団したいと考えている市民にとっては、有用な制度であると考えられる。

7、今後の政策
 たとえば、ボランティア活動に従事した市民には、それを数値化することで、それに応じた額を所得税の控除に充てることができる、といった制度を構築することも、ボランティア参加への誘因として有効なものだと考える。

 たとえば、町田市には所得税の控除とは関係ないものの、「いきいきポイント制度」というものがある。これは、「登録された介護施設・保育園などで、花壇の手入れ、話し相手、趣味活動でのお手伝い、園児の遊び見守りなど」を行うと手帳にポイントが付与され、「手帳に押印されたスタンプの数に応じていきいきポイントに還元することができ」るというものである。そのポイントは、図書カード等と交換することができる。

 この制度は、先述のようにボランティア活動を所得税の控除に充てることができるものではないが、国が行うことで、全国的に統一された、ボランティア活動に従事した際の利益還元の仕組みを導入することは可能であると考える。

 このような制度があれば、市民によるボランティア活動へのより活発な参加が促されるものと筆者は考え、それが国の政策に反映されることを願っている。