町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

一橋大学 国際・公共政策大学院「政策法務研究」報告リポート大学での活動

2011.11.10(木)

【箇所】一橋大学 国際・公共政策大学院 公共法政プログラム
    一橋大学大学院 法学研究科 修士課程・博士後期課程
【科目】政策法務研究・行政法特殊問題第一
【開講学期】2011年度 冬学期[2単位]
【担当】米田 順彦 教授〈一橋大学大学院 法学研究科〉
【テーマ】地方財政の健全化
【サブテーマ】自治体財政健全化法の制定

目次
1、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」とはどんなものか
1−1、自治体財政健全化法のねらい
2、自治体財政健全化法の概要
2−1、4つの財政指標で振り分ける
2−2、実質赤字比率とは−健全化の第1指標
2−2−1、実質赤字比率が法律にされた理由
2−3、連結実質赤字比率とは−健全化の第2指標
2−3−1、連結実質赤字比率の問題点
2−4、実質公債費比率とは−健全化の第3指標
2−5、4指標のまとめ
3、早期健全化段階になるとどうなるか
3−1、財政健全化計画の内容
3−1−1、健全化判断比率の基準を超えたら、財政健全化計画を作成しなければならない。
3−1−2、財政健全化計画は議会の承認が必要
3−1−3、国等の勧告
4−1、財政の再生
4−1−1、財政再生計画
4−1−2、財政再生は、地方債を通じて行われる

1、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」とはどんなものか
1−1、自治体財政健全化法のねらい
 サブテーマである、「自治体財政健全化法の制定」の法的主体である、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」 (同法の政府が用いる略称は「地方公共団体財政健全化法」であるが、本リポートでは通称である「自治体財政健全化法」を主に用いる)は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律案」として、2007年(平成19年)3月9日での閣議決定を経て、国会に提出されたものである。

 この法案は、2006年12月8日に公表された「新しい地方財政再生制度研究会報告書」(宮脇淳座長)の大枠を法案化したものであった。同報告書においては、地方財政再建促進特別措置法に基づく再建制度には、
1、各団体において、日常的に早期是正・再生という観点を置いた分りやすい財政指標の開示がなされておらず、また、財政指標及びその算定基礎の客観性・正確性等を担保する手段が十分でないこと、
2、再建団体の基準しかなく、早期に是正していく機能がないため、本来早期に財政の健全化に取り組むことにより対処すべきであるにもかかわらず事態が深刻化し、結果的に長期間にわたる再建に陥ってしまい最終的に住民に過大な負担を求めることになりかねないこと、
3、実質収支(赤字)比率(フロー指標)のみを再建団体の基準に使用しているため、実質公債費比率等の指標が悪化した団体やストックベースの財政状況に課題がある団体が対象とならず、また、主として普通会計のみを対象とし、公営企業や地方公社等との関係が考慮されていないこと、
4、再建を促進するための仕組みが限定的であること、
5、公営企業における再建制度(準用再建)は、普通会計とはまったく独立した別立ての制度となっているうえに財政情報の開示が不十分であることや、事業の経営状況が住民負担に直結しやすい場合が多いこと、早期是正の制度がないこと、等の課題があることが指摘されている。

 この報告書に基づいて、国会では、衆議院で一部修正され、2007年6月15日に参議院本会議で可決成立したもので、6月22日に公布された。次いで、同年12月から2008年2月にかけて政省令が定められたことで、その骨格があきらかとなった。

 同法は、2006年1月から法案化に向けて検討が始められ、竹中平蔵総務大臣の下での私的懇談会「地方分権21世紀ビジョン懇談会」において、「(再生型)破綻法制の論議」をとおして、その後にできた制度である。その検討過程で、夕張市の破綻が起こり、同市は2006年6月に財政再建法による再建計画策定へと動き出し、2007年3月に再建団体に指定された経緯がある。

 「自治体財政健全化法」の特徴を一言でいえば、自治体が破たんすることを避けるための予防措置をもうけたところにある。つまり、不幸にも再生スキームの適用を受けて、再生の過程を歩む自治体がでても、その自治体財政の健全化がすすめば、その後は、予防段階にとどまり、最終的なスキームにはいかないように制度設計されたものが、同法なのである。

 なお、自治体財政健全化法は、それまであった自治体の財政再建のための法である、「地方財政再建促進特別措置法(財政再建法)」 を廃止し、52年ぶりに改正したものである。

2、自治体財政健全化法の概要
2−1、4つの財政指標で振り分ける
 自治体財政健全化法では1条で、「財政の早期健全化及び財政の再生並びに公営企業の経営の健全化」とする同法の目的をのべている。旧財政再建法に、早期是正の措置と地方公営企業法の経営再建制度部分が加わったものである。

図−1 財政健全化法の目的
健全性に関する比率の公表
 自治体の財政の早期健全化・再生 ⇒財政健全化・再生計画
 公営企業の経営の健全化     ⇒経営健全化計画
計画促進のための措置

 同法2条では4つの財政指標である実質赤字比率、連結実質赤字比率(全会計の実質赤字等の標準財政規模に対する比率)、実質公債費比率、将来負担比率(公営企業、出資法人等を含めた一般会計の実質的負債の標準財政規模に対する比率)と、早期健全化基準、財政再生基準の2つの基準を定義している。

 このうち、連結実質赤字比率と将来負担比率は、どちらも新たに導入されたもので、これまではなかった財政指標である。どちらも、一般会計だけでなく、公営事業会計などの赤字や負債を認識しようとするものである。

 将来負担比率は、元利償還金ではなく、地方債残高を問題にしたという意味ではじめてのストック指標といえる。

 この4つの指標で、すべての自治体(都道府県、市町村及び東京都の特別区)を「健全段階」、「財政の早期健全化」の段階、「財政の再生」の段階の3つに区分し、早期健全化段階や財政再生段階になった場合には、それぞれのスキームに従って財政健全化を促そうとするものである。また、それと並行して、地方公営企業についても経営健全化のスキームをもうけて、早期健全化に準じた方策で健全化を促すこととしている。

 上記4つの指標をまとめて健全化判断比率とよんでいる。この4つの指標のうちのどれか1つでも早期健全化の水準以上になれば早期健全化段階となり、財政再生段階の基準以上になれば再生段階とされる。早期健全化段階になると、「財政早期健全化団体」、財政再生段階になると「財政の再生団体」とよばれることになる。

 もっとも将来負担比率は再生段階には適用されず、どれだけ比率が悪化しても早期健全化段階までとなる。また公営企業の経営の健全化は、早期健全化の枠組みのなかで行われる。

2−2、実質赤字比率とは−健全化の第1指標
 実質赤字比率とは、従前の「実質収支比率」と同じものである。その実質収支比率とは、標準財政規模に対する、歳入総額から歳出総額を差し引いた額の割合であり、単年度の黒字か赤字かを判断する指標である。

2−2−1、実質赤字比率が法律にされた理由
 自治体の議会で審議の対象となる予算書は、一般会計と特別会計にわけられる。
 予算は、議会の議決を経なければ執行することはできず、決算は議会の認定を必要とはしないものの、議会の認定を経てはじめて確定する。

 このように、自治体の予算と決算は、一般会計と特別会計とを問わず、議会の審査の対象となるため、政治統制下に置かれている。

 ただし、特別会計には、地方公営企業会計や国民健康保険事業会計、介護保険事業会計等、さまざまな特別会計がある。

 そこで、全国的にできるだけ統一された(架空の)会計で、自治体間を比較し、管理することの重要性も指摘されるところとなる。そのために導入されたのが、普通会計制度である。それを使うことによって、地方財政白書や他自治体との比較が容易に行うことができるようになった。

 しかし、普通会計は、通常「決算統計」とよばれることからもわかるとおり、それは「統計」であって、政治統制の下にある「会計」ではない。つまり、「実質収支比率」も、議会に制度的に報告されることはない。地方財政白書をつくるために都道府県や総務省に報告される数値というのが、本来の役割であったのである。

 そこで、自治体財政健全化法では、実質収支比率が法的に定義され、実質赤字比率となったのであり、それは、一般会計等の実質赤字額を標準財政規模で除したものである。なお、標準財政規模とは、標準税収入額に普通地方交付税と地方譲与税を加えたものである。

 一般会計等=一般会計+(特別会計−1−2−3)

1、法適用企業の特別会計
地方公営企業法2条 で規定されている企業の全部又は一部を適用する企業に係る特別会計のこと。

2、法非適用企業の特別会計
 地方財政法6条が規定する政令で定める企業以外のものに係る特別会計のこと。
 具体的には、国民健康保険事業、介護保険事業、農業共済事業、交通災害共済事業等に係る特別会計のことをいう。

3、実質赤字とは
 実質赤字=繰上充用額+(支払繰延額+事業繰越額)
・繰上充用額=歳入不足のため、翌年度歳入を繰り上げて充用した額
       =形式赤字+(継続費の逓次繰越額+繰越明許費繰越額+事故繰越額−未収入特定財源)

・支払繰延額=実質上歳入不足のため、支払を翌年度に繰り延べた額

・事業繰越額=実質上歳入不足のため、事業を繰り越した額

2−3、連結実質赤字比率とは−健全化の第2指標
「連結実質赤字比率」=全会計を対象とした実質赤字(または資金の不足額)の標準財政規模に対する比率

 連結実質赤字比率は、連結実質赤字額から標準財政規模を除したもの

 連結実質赤字比率の定義は、全会計の赤字額から黒字額を引いた額(これを、連結実質赤字額という)を、標準財政規模で割った比率であり、黒字であれば、「0」になる。

 この場合の、全会計とは、一般会計、公営事業会計、公営企業会計がその範囲なので、民間企業ならば、子会社や持ち分法適用会社ははいらない。

 また、連結実質赤字比率には、一部事務組合、第三セクター、地方公社、地域連合等は対象外である。しかし、この指標では、国民健康保険事業、介護保険、下水道事業、病院事業の赤字はでてくる。つまり、国民健康保険、介護保険、下水道事業等の公営事業会計、公営企業会計の運営状況はわかる。

 各地方自治体の会計の赤字・黒字は、下記アドレスにある総務省のホームページで確認することができる。https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/zaisei_ichiran.html

 なお、標準財政規模とは、自治体が、標準的な状態のとき、通常収入されるであろう経常的一般財源の規模のことをさす。

 実質黒字とは、歳入(繰上充用額、支払繰延額及び事業繰越額を除く)が歳出を超える場合の当該超過額をさす。

2−3−1、連結実質赤字比率の問題点
 公営企業の流動資産と流動負債の差額しか、連結実質赤字比率はみていないため、固定資産や固定負債を、この比率から想像するのは、困難視される。

2−4、実質公債費比率とは−健全化の第3指標
 実質公債費比率は、2005年度決算からはじまったものであるが、この数値をつかった起債制限措置が、当分の間行われず、旧来の起債制限比率がつかわれた。

 実質公債費比率とは、元利償還金と準元利償還金を合計したものから特定財源と元利償還金と準元利償還金に係る基準財政需要額参入額の合計を減じたもの。

1、元利償還金
 地方債などの借入金に係る返済金のこと。

2、準元利償還金
・満期一括償還地方債について、償還期間を30年とする元金均等年賦償還をした場合の1年当たり元金償還金相当額
・一般会計等から一般会計等以外の特別会計への繰出金のうち、公営企業債の償還にあてたと認められるもの
・組合・地方開発事業団(組合等)への負担金・補助金のうち、組合等が起こした地方債の償還の財源に充てたと認められるもの
・債務負担行為に基づく支出のうち公債費に準ずるもの

3、特定財源
 充当する経費が特定されている財源のこと。具体的には、国庫支出金、地方債、分担金及び負担金等。

4、元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額参入額
 一般会計等が負担する元利償還金と準元利償還金の標準の標準財政規模に対する比率のこと。いいかえると、収入のうち、どれくらいを借金の返済にあてているかを示すもので、一部事務組合や広域連合までを含めて判断する。

2−5、将来負担比率とは−健全化の第4指標
 将来負担比率も、第2指標の連結実質赤字比率と並んであらたに定義された指標である。
 ただし、算定に不確定要素が多く(政令に委任されている項目が2ヶ所、省令に委任されている項目が9ヶ所あり、総務大臣が定める額というものまである)、推計にも算定にも困難を感じる指標である。

 従前でも、将来負担比率という表現は使われていたものの、それは、地方債残高と債務負担行為翌年度以降支出予定額から積立金現在高を引いたものを、標準財政規模で割るといったものでした。

 それに比して、自治体財政健全化法の将来負担比率は、債務を第三セクターの損失補償額にまで拡大し、交付税に参入されている元利償還金に係る基準財政需要額を勘案している点が異なる。

 この指標を概略化すると、次のようになる。
 一般会計(普通会計)が背負っている借金が、一般会計(普通会計)の標準的な年間収入の何年分に相当するかがわかる。

 まず、将来負担額として、次のものを合計します。
・地方債残高
・債務負担行為支出予定額:土地開発公社が土地を先行取得した際に行った債務負担行為は、後に一般会計がその土地を買い取ることになるので、地方債と同じように借金・将来負担となる。
・一部事務組合、地方独立行政法人、地方公社、第三セクターなどに関する負担見込額
・損失補償額
・連結実質赤字額
・一般会計雇用職員の退職手当引当金等
 この場合の将来負担額とは、自治体の一般会計が引き受けることになる可能性のある負債の全体とかんがえられる。
 次に、この将来負担額から、以下のものを差し引く。
・基金
・借金の返済にあてる特定財源:たとえば、公営住宅の使用料、国からの利子補給補助金、貸付金の原資として地方債を発行した場合の相手方からの返済金等
・交付税に参入される公債費の見込額
 これらは、貯金や借金返済のための補助金、交付税を、借金総額から差し引くというイメージとなる。以上の2つが、分子となる。

 分母は、標準財政規模であるが、分子で、交付税に参入される公債費の将来見込額を減じているので、分母でも、1年分の交付税の公債費返済にあてられている分を差し引くことになる。

 こうして得られた数値は、一般会計が背負っている借金が一般会計の標準的な年間の歳入の何年分であるかをあらわすこととなる。

 この指標は、第3指標の実質公債費比率を負債のストック面に置き直したものに近いというかんがえ方もなりたつ。
 将来負担比率=一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率

2−5、4指標のまとめ
 自治体財政健全化法2条に示されている、4つの指標は下記のように位置づけられる。
実質赤字比率 フロー指標 一定期間内の収支勘定をみる指標
連結実質赤字比率 フロー指標
実質公債費比率 フロー指標
将来負担比率 ストック指標 ある時点での資産の量を測る指標

 同法における、財政の早期健全化とは、自主的かつ計画的にその財政の健全化を図ることで、同法2条5号にある「自主的かつ計画的にその財政の健全化を図る」こととされる。

3、早期健全化段階になるとどうなるか
 もしも地方自治体が、4つある財政の健全化判断比率のうち一つでも基準を超えた場合には、「財政健全化計画」を定めなければならない。そこでは、次に記すスキームで財政再建に努めなければならなくなる。

 また、健全化基準を満たしていないもの、あるいは再生基準に達しているものが一つでもあれば、財政健全化計画ではなく、「財政再生計画」をつくらなければならない。

1 財政健全化計画
 健全化判断比率のうちのいずれかが早期健全化基準以上の場合には、財政健全化計画 を定めなければならないことになる。

2 財政健全化計画の策定手続等
 財政健全化計画は、議会の議決を経て定め、速やかに公表するとともに、総務大臣・都道府県知事へ報告し、総務大臣は全国的な状況を公表する。また、毎年度、その実施状況を議会に報告し、公表する。

3 国等の勧告等
 財政健全化計画の実施状況を踏まえ、財政の早期健全化が著しく困難であると認められるときは、総務大臣又は都道府県知事は、必要な勧告をすることができることとする。
 財政健全化計画は、拘束力の強いものであって、予算編成で、それと大きく異なった内容の予算を組んだ場合、それだけ財政の健全化は進捗しなくなるため、議会の信任は得られにくくなる。

 さらに、同法7条によって総務大臣または都道府県知事は、「財政健全化団体の財政健全化計画の実施状況を踏まえ、当該財政健全化団体の財政の早期健全化が著しく困難であると認められるときは、当該財政健全化団体の長に対し、必要な勧告をすることができる」とされている。

 このスキームが適用され、制度の趣旨通りに機能した場合、決算報告が不適切であるとか、巨額の公金横領等の事故がないかぎり、早期健全化段階からさらに財政状況が悪化して財政再生段階に至る事態になることは考えにくいので、早期健全化段階で食い止め、自治体が議会の監視下で自主的に財政再建につとめる自律的な財政健全化をすすめていこうとする制度となっている。

3−1、財政健全化計画の内容
3−1−1、健全化判断比率の基準を超えたら、財政健全化計画を作成しなければならない。
 自治体の長は、公表した健全化判断比率を、速やかに、都道府県知事及び政令指定都市の長にあっては、総務大臣に対し、政令指定都市を除く市町村及び特別区の長にあっては都道府県知事に対し報告しなければならない。この場合において、当該報告を受けた都道府県知事は、速やかに、当該健全化判断比率を総務大臣に報告しなければならない 。

 財政健全化計画をつくるときは、4つの指標がすべて、最短で基準を下回るように、計画を立てなければならない。その内容は、下記のとおりとなる。

1、財政悪化の要因分析
2、最短の計画期間
3、財政の早期健全化の基本方針
4、一般会計などの実質赤字解消の方策
5、指標2.3.4それぞれを基準以下に改善する方策
(連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率を基準以下にする)
6、年度ごとの歳入歳出計画
7、年度ごとの指標の見通し
8、その他必要なこと

3−1−2、財政健全化計画は議会の承認が必要
 財政健全化計画は、自治体の長が作成する。それを議会に提案し、議会の議決を経て定めなければならない 。
 財政再建法の財政再建計画でも議会の議決が必要とされたが、財政健全化法では、早期健全化の段階での財政健全化計画にも、議会の議決が必要とされる。

 なお、2008年度決算に基づき、財政健全化計画の策定が義務づけられたのは、21市町村であった。

3−1−3、国等の勧告
 早期是正スキームにおいては、自治体の自主的な改善努力を促すこと等により財政の早期健全化を実現することが目指されており、ディスクロージャー等により可能な限り住民自治による取組みを行うことが基本とされている。そのため、国・都道府県による関与は、地方公共団体の自主的取組みを促すことに限定されている。

4−1、財政の再生
4−1−1、財政再生計画
 実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債比率(以下、「再生判断比率」という)のいずれかが財政再生基準以上である自治体に対しては、レッドカードが出され、国等の強力な関与が行われることになり、当該自治体は、当該再生判断比率を公表した年度の末日までに、当該年度を初年度とする財政再生計画を策定することを義務づけられる 。

 再生判断比率は、実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債比率というフロー指標に限られ、将来負担比率というストック指標が含まれていないのは、財政再生団体に対して国等の強力な関与が行われるため、財政悪化が切迫したことを示すフロー指標を用いるべきであり、将来のフロー悪化の可能性を示すものの、それ自体で直ちに財政悪化の切迫性を示すとまではいえないストック指標を用いることは適切でないという判断による。

 財政再生計画においては、財政健全化計画と比較して、より具体的な方策の記載が義務づけられている。
 財政再生計画は、財政健全化と同様、地方自治体の長が作成し、議会の議決を経て決める 。
 2008年度決算に基づき、財政再生計画の策定が義務づけられたのは、北海道夕張市のみであった。

4−1−2、財政再生は、地方債を通じて行われる
 自治体財政健全化法の実質的な機能、制裁と救済にかかわる機能は、地方債を通じて行われることになる。

 今日、この法律が用意した救済装置が、「再生振替特例債」 (収支不足額を、再生振替特例債という地方債で調達することができる)だというのは、同制度の力量不足との感が免れえない。過剰な債務が問題となってくるだろう今後の財政破綻に対して、「特例債」という手法が、それも収支不足額を「振替」るというやり方が、妥当だとは思えないこところがあるものとかんがえる。

〔参考文献〕
小西砂千夫『自治体財政健全化法−制度と財政再建のポイント』(学陽書房、2008年)
宇賀克也『地方自治法概説』〔第4版〕(有斐閣、2011年)
月刊「地方財務」編集局編『スラスラわかる!自治体財政健全化法のしくみ』(ぎょうせい、2007年)