町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

I.T. 「2度目の卒業にあたって」大学での活動

2002.03.01(金)

 I.T.とは、立教大学経済学部専門教育科目「経済地理」(現「経済地理学」)の担当、矢延洋泰先生の私的ゼミナールで出している会報です。
 そこに寄稿したものを転載させていただきました。

「2度目の卒業にあたって」

 熟年世代が向学心から再び大学生となることを、少子高齢化社会の扉が開いた日本の大学では積極的に受け入れ始めているので、さほど珍しいことではないでしょうが、ぼくは今月2つ目の学士号を手に入れます。
 けれど、今回の学生生活は純粋に勉強を楽しむためでしたから、学士号の取得には何の意味もなく、ただただ興味の赴くままに様々な授業に出席しました。

 経済学部の学生でしたから経済専門科目はもちろんのこと、法学部や社会学部の専門科目や全学共通カリキュラム、F-Campusにより今年度から受講できるようになった早大の授業、果ては大学院の経済学研究科の授業にまで潜り込ませて頂きました。

 様々な授業を聴くにつれ痛切に感じたのは、学部教育段階での学部縦割りの弊害です。つまり、真にリベラルアーツを教育の基本方針に掲げる大学ならば、米国大学教育の流れを汲む国際基督教大学のように、教養学部のみに改組して、学部ごとに敷居を設ける必要はないということです。

 教養学部の4年間で、徹底的に母国語とそれ以外の言語に触れ、短期間であれ留学を課し、併せて東西の古典的著作を精読する作業を強いれば、少しは”教養”が身に付くようになるのではないでしょうか。その4年間を経て、初めて専門教育を受けても一向に遅くはなく、むしろ現行の日本のように、18歳(飛び級の場合は17歳)で、身につけるべき学問を選択するのは、あまりに時期尚早でありましょう。

 復学のテーマは、各学問の基礎を学ぶことでした。文学部在学中に「文学概論」は既に学んでいましたから、今回の学生生活では、経済学部生ですから「経済原論A」(マルクス経済学)、「経済原論B」(ミクロ経済学とマクロ経済学)は当然学ぶとして、それ以外にも法学部と社会学部の基幹科目「法学原理」「社会学原論」は是非学びたかったのですが、2年間の学生生活では、どうしても無理でした。

 立教の経済学部は、いまや世界的にも珍しいマルクス経済学の牙城ですから、未だにマルクス経済学が必修科目なのですが、労働価値説に根拠をおくこの経済学は、効用価値説を採用する近代経済学と較べて、ぼくにとってはとても面白い授業でした。なかで、剰余価値の生成過程を解き明かす論理には、まさに感動を覚えたものです。

 他にも有意義な授業は多々ありましたが、その中にはもちろん矢延先生の「経済地理」も入ります。あるいは、新約聖書学の世界的泰斗、佐藤研教授の授業「聖書の思想と人間観」にみる聖書の厳密な読み方、名取四郎教授「美術の歴史1」にみるレオナルドの『モナリザ』という絵画の独自な見方等の授業は、実にスリリングな講義でした。

 いずれにしろ今回の復学は実に有意義なもので、機会があればもう一度、大学に戻りたいものです。