町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

I.T.62号「米国テロ」大学での活動

2001.11.11(日)

 I.T.とは、立教大学経済学部専門教育科目「経済地理」(現「経済地理学」)の担当、矢延洋泰先生の私的ゼミナールで出している会報です。
 そこに寄稿したものを転載させていただきました。

「米国はテロを察知できなかったのか」

 それは日本時間の九月十一日午後十一時過ぎ、仕事を終え、町田の実家に帰ると、普段なら既に寝ているはずの母が起きており、TVを見て興奮している。慌ててブラウン管に目を移すと、現実の情景とは俄かには信じられない惨状がそこには映し出されており、不謹慎な物云いで誠に恐れ入りますが、映画のスクリーンを見ている錯覚を覚えたほど。当日は台風が過ぎてもなお蒸した一日だったので、ざっとシャワーを浴びると、バスタオルで身体を拭くのももどかしく、すぐにTVの前に戻り、あとは夜明けまでずっと、あっちこっちのチャンネルをザッピングしながらブラウン管に釘付けになったのは、全世界の皆さんと同じこと。

 翌日以降の情報は主に新聞から得ておりましたが、十三日の夕刊のベタ記事を見て一驚を喫したのでした。それは、テロによる航空需要の激減を見越して、米国のノースカロライナ州に本社を置くミッドウェー航空が、廃業を決定したという記事でした。同記事に依れば、同社は八月に事実上倒産していたものの、なお会社再建の道を探っていたところ、同時多発テロによる航空需要の激減を見越し、「収益回復の見込みが全く立たない」として運航業務継続を断念した、という記事でした。

 たしかに、米国政府は同時テロにより、史上初めてすべての空港を閉鎖する措置を執りはしましたが、もちろんそれが永続するはずはなく、実際、それはほどなく解除されたのでした。けれど、ミッドウェー航空の予想通り、解除後もテロの影響によって航空需要は回復せず、その結果をみる前に同航空は、同時多発テロの翌日には右記の決定をしたのです。この、決定に至る時間の迅速さこそ、われわれが見習わなければならないことではないでしょうか。こういう即断即決を見せつけられると、ミッドウェー航空の中枢を担っていたに違いないアングロサクソンと我々とでは、種族が全く違うとの感さえ抱かされます。

 もうひとつ。米国下院議会では九月十四日に、ブッシュ大統領に武力行使を認める決議を採択しましたが、その票数は四百二十対一であり、そのため上院では満場一致であったものの、大統領の求める上下両院の満場一致は実現しなかった、という記事。反対したのはカリフォルニア州選出のバーバラ・リー議員(民主党)。彼女はこう云っています。「だれかが抑制を利かせなければならない。決議の意味をじっくり考えるべきだ」と、武力行使が世界的に暴力の悪循環を生みかねない、との懸念を示しています。彼女は九八年のイラク空爆にも反対し、九九年のコソボへの部隊派遣でも下院でただ一人決議に反対しました。このことからも分かるように筋金入りの平和主義者であり、ほかにリベラルな思想を体現したものとして、ブッシュ政権が離脱を宣言した地球温暖化防止の京都議定書を支持、今年七月には「平和省」の新設法案を提出しています。その後、この意見に対して、米国では論議が巻き起こりましたが、サンフランシスコ・クロニクル紙によれば、日増しにリー議員支持の意見が多くなっているそうです。

 それに比して、「日刊ゲンダイ」「夕刊フジ」のタブロイド紙やスポーツ紙に代表される日本のイエロージャーナリズムの跳梁跋扈ぶりには、つくづく辟易させられたものです。曰く”米威嚇核報復””核兵器投入準備”等の見出しを、塩せんべいのごとき大きな活字を使って書くさまはまるで、太平洋戦争において軍部の提灯持ちをした、当時の大政翼賛体制マスコミと何ら変わってはいないからです。あぁ、情けない。新聞は、いつから戦意発揚を旨とするようになったのでしょうか。それとも、とうとうその正体を現した、というのでしょうか。かのような煽動記事を大衆は喜ぶとでも思っているのでしょうか。

 その太平洋戦争は、云うまでもなく日本時間で一九四一年十二月八日、宣戦布告前に帝国陸海軍によって先端が開かれたのですが、中で、マレー半島への進軍と並んで、帝国海軍による真珠湾への奇襲攻撃がありました。その際、真珠湾攻撃直後に日本へ宣戦布告を議決した際も、上院は満場一致をしたものの、下院は一人の議員が反対したという、まさに今回と同じ票数を見たのであります。因みに、そのときも反対票を投じたのは女性議員だったそうです。

 ただし、ここで云いたいのは別のこと。つまり、真珠湾への攻撃を米国政府は、暗号解読等により充分察知していながら、敢えて日本軍に攻撃させていたことは、もはや常識であります。そのため、真珠湾に常にはいるはずの空母がすべて出払い、ただの一隻すらも残ってはいなかったのです。これにより米海軍第七(太平洋)艦隊の損傷は最小限に抑えることができたのでした。戦争をしたくてうずうずしていた米国は、真珠湾を犠牲にして、めでたく、日本との戦端を開くことができたのです。

 それと全く同じことが、今回の同時多発テロにも当て嵌まる、との意見があるのです。つまり、石油資本と軍需産業に支えられたブッシュ政権は、テロを知りつつ、両産業に利益をもたらすことが必至な戦争状態を作り出すために、テロを予め察知していながら、それへの有効な打撃を加えなかったというのです。そう云われればたしかに、ペンタゴンの旅客機が激突した箇所は、まるでそこに突っ込むのが分かっていたかのように、改装工事をしており、多くの職員は別の場所に移っていましたし、ハイジャックされた四機のうち、ホワイトハウスへの激突を試みたと思われる旅客機のみ、米空軍によって撃墜されたといわれていますが、それは、単なる偶然のなせることなのでしょうか。

 もちろん、真相はまだ闇に包まれてはおります。けれど、権謀術数の渦巻く政治の世界では、何が起こっても決して不思議ではないのが、今も変わらぬ世のことわり理です。